アルミルーフ採用で軽量化とともに重心を下げた!

アルミルーフによる低重心に加えて、常用域での減衰力を抑えたビルシュタインにより、日常的な乗りやすさも高めている。
ランサーエボリューションⅧの発売から1年後の2004年2月、ファンを、喜ばせると同時にエボリューションⅧのユーザーを悔しがらせるマイナーチェンジが行われた。それがエボリューションⅧ MRだ。ここでの進化はちょっとした手直し程度ではなく多岐にわたる改良が三菱自動車によって施されていた。「MRという呼称」には特別な意味がある。ミツビシレーシングの頭文字の名称を冠したこと自体がその本気度を示していた。
エボリューションⅧ MRはアルミ製ルーフの採用など徹底的な速さを追求する姿勢が語られがちだが、実はそれだけではなかった。車両の質感という側面に本格的に注力したのである。エボリューションⅧまではGSRという一般普及バージョンがあったとはいえ、その居住性や乗り心地は決して良いとは言えなかった。だが北米とヨーロッパへの正規輸出もあり、世界展開しても受け入れられる車両を作ろうという考えが芽生えていたという。快適な乗り心地、安全を確保しながらに速く走ることを目指していたのだ。世界展開を考えた場合、快適さは必須であり、そのポリシーは後に続くエボリューションXまで一貫する。

デザイン的には、エボリューションⅧと同一。MRのエンブレムくらいでしか見分けられないが、それもマニアウけする部分だ。
パワーユニットの4G63型インタークーラーターボは細部にわたって改良された。従来の長所である低速からの扱いやすいフラットなトルクはそのままに、高〜中速域で厚みの増した出力特性となった。具体的にはGSRではターボチャージャーのタービンノズル径を拡大し、それに合わせてカムシャフトのプロファイルが変更され、ランサーエボリューションⅧに対して中~高速域重視の出力特性とした。さらにGSRでは過給圧制御を最適化することでトルク特性をいっそう安定化させるとともに2リッタークラスでトップレベルの最大トルク40.0kg-m(400Nm)/3500rpmを実現した。
パワーアップに伴う耐久性アップの対策としてはシリンダーヘッドの水路の形状変更や熱処理による補強、シリンダーヘッドガスケットの3層構造から5層構造化、ピストンリングのイオンプレーティング化などが行われた。GSR、またRSともにコアを2段増設した大容量オイルクーラーを採用した。ブレーキ系ではスポーツABSを装備した。車輪速センサーに加え、車両の減速度と旋回状態を検出するGセンサーと、操舵状態を検知するハンドル角センサーからの情報をもとにECUで4輪をそれぞれ独立して制御し、制動状態における操舵性能を向上させるシステムだ。

フロントグリルは好き嫌いが別れるところだが、精悍さはそれでも際立つ。ワイド&ローなフォルムが目立つフロントビュー。
前後輪の制動力配分を電子制御で最適化するEBD(電子制御制動力配分システム)によって、限界領域でのブレーキング時に後輪の制動力配分を増やして、前輪の負担を軽減し耐フェード性能を向上させたのに加え、路面状況や積載状態の変化に対しても常に安定した制動性能を発揮する。駆動系はこれまでのモータースポーツなどからのフィードバックにより、電子制御4WDシステムACD+スーパーAYCとスポーツABSの協調制御がよりきめ細かくなり、よりスポーティなセッティングとなった。
従来はACD+スーパーAYC制御はABS作動を優先していたが路面状況に応じてセッティングを最適化している。具体的にはドライの舗装路などの高ミュー路においては、スポーツABS作動時にもACD+スーパーAYCの制御を通常どおり持続させ、ターンイン時の回頭性とトレース性を向上させた。エンジンのトルク向上に対応するため、駆動系も強化している。ディファレンシャルのハイポイドギアを高強度鋼に変更して、強度を高めた。さらにスーパーAYCのクラッチケースをスチール製からアルミ製に変更するとともに、クラッチディスクの肉厚を見直すことで約8.0kgの軽量化を実現した。

