自然吸気6気筒のような絶品のエンジンフィール
それでも、こんな細かいことをあえて指摘したのは、快適性とハンドリングのバランスこそがアルピナの真髄だと信じるから。この、相反するふたつの要素をいかにして両立させているかは、私にとって長年の謎だったけれど、先日、アルピナを担当するニコルのエンジニアから話を聞いて、少しだけその謎が解けた。サスペンションのバネ定数が一定ではなく、深くストロークするほどにバネ定数が高まるプログレッシブレートを採用しているというのだ。しかも、バネ定数の変化する比率はかなり大きいらしい。
一般的にいって、大きくバネ定数が変化する足まわりはドライバーになんらかの違和感を与える。しかし、私はアルピナに乗ってプログレッシブレートと意識させられたことは一度もない。単にプログレッシブレートを用いるだけでなく、それを不自然に感じさせないレベルまでチューニングする技術。これこそ、アルピナ・マジックの真骨頂だろう。

サンルーフ装着車はルーフ先端にアルピナ独自のスポイラーが備わるなど、空力へのこだわりも一級。
エンジンも絶品だった。同じS58系エンジンを積むBMW M3はメカニカルノイズもそれなりに聞こえてきてダイレクト感が強いのだけれど、B3 GTはそういったノイズやバイブレーションをひととおり遮断したうえで、ウーッというストレート6ならではの鼓動感だけを伝えてくれる。E90までの自然吸気6気筒を思わせるこのエンジンフィールは、いまアルピナに乗る最大の理由になり得るくらい重要なポイントだ。
ハンドリングに関する最初の驚きは、高速道路のランプを走っているときに訪れた。大きな曲率で長く曲がり込むカーブを、B3 GTは一発の操舵で鮮やかに曲がりきったのだ。これこそステアリングレスポンスに寸分の遅れもなく、ステアリングゲインがリニアに保たれている証拠といって構わない。この、ほんの2、3秒の経験だけで、私はB3 GTに一気に惚れ込んでしまった。



