文: 中村圭吾/写真: 永元秀和
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水平対向×FRという挑戦が育てた、SUBARUのピュアスポーツ

水平対向+FRならではの低重心と自然な一体感。思い通りに操ることのできる喜びが、SUBAR BRZ最大の魅力。思わずワインディングロードへ連れて行きたくなる。
SUBARU(以下、スバル)の走りといえば、「水平対向エンジン」、そして「AWD」。そのイメージはいまも変わらない。そんなスバルがFRスポーツカーを送り出したのは2012年のこと。トヨタとの共同開発によって誕生した86/BRZである。
「水平対向エンジンを積んだFRスポーツ」は当時、この組み合わせだけで胸が躍った。トヨタがAE86の型式を受け継ぐ「86」という車名を復活させた話題性もあったが、「水平対向エンジンはスバルでしょ」というファンも少なくなかった。とはいえ、共同開発という新しい挑戦は結果として成功だった。
2021年には2代目へ進化し、トヨタ GR86とスバル BRZ、それぞれの個性もより明確になった。数少ない国産FRピュアスポーツとして、この2台が作り続けられていること自体が貴重なのである。
そんなBRZは2026年7月30日に改良版のF型が発表されたばかりだが、Motor Magazine誌のスポーツカー特集の取材であらためてスバル BRZ STI Sport(E型)のハンドルを握った。
試乗車はブレンボ製ブレーキキャリパーやSTI専用チューニングダンパーを備えるトップグレードの「STI Sport」。
何度も試乗してきたクルマなのに、ブルーのボディと六連星エンブレムの組み合わせを見ると不思議と気持ちは昂ぶる。大きく張り出した前後フェンダーとタイトなキャビン、そして低いルーフなどなど・・・。あらためて眺めると、実にスポーツカーらしいプロポーションだ。

全長4265×全幅1775×全高1310mmというボディサイズはいまではコンパクトな部類に入る。車両重量も1270kgと軽いので、組み合わせる235psの2.4Lエンジンでもパワーほどよく、アクセルペダルを踏んでいける。
乗った瞬間に思い出す「スポーツカーって、こういうものだった」

水平基調デザインのダッシュボードにメーターバイザーの組み合わせや三連ダイヤルの空調スイッチが特徴的なインテリア。ハンドルやシフトノブの操作感にも拘っている。
後席は決して広くはない。シート位置によっては荷物置き場のようになってしまう。しかし、それでもいい。シートバックを倒せば荷室は十分に使えるし、なにより、運転席こそが特等席なのだから。
低い着座位置へ身体を沈め、スタートボタンを押すと、低音が響く。比較的軽いクラッチをつないで走り出す。エンジン音もタイヤの音も、路面の情報も、すべてがダイレクトに伝わってくる。本来スポーツカーってこういうものだったよなと、忘れかけていた感覚を思い出させてくれる。
かつて2ドアFRスポーツで多くの人に愛されたモデルと言えば、日産のシルビアや180SXがある。頑張れば新車でも手が届き、中古になれば走りの入門車として多くの若者が乗っていた。私自身はFF派だったのでシビックやレビンを乗り継いできたが、弟の180SXを借りて、FRの走りを覚えようと必死だった記憶がある。
当時のクルマは今ほど完成度が高くなかった。だからこそ自分たちで手を入れ、育てる楽しみもあった。一方、現代のBRZは少し違う。完成度が高すぎる、と言いたくなるほど良くできている。現代の技術があれば、ここまで楽しく、それでいて十分に快適に乗れるスポーツカーが作れてしまうのだ。だから、こんな仕事をしていても、ときどき「すごい時代になったな」と、我に返ることがある。
そんな思い出話はさておき、目的地も決めずにBRZで走り始めた。ワインディング路でも、高速道路でも、目的地なんかどこでもいいのだ。ただただ運転がしたくなる。それがスポーツカーだ。

MTモデルは6速でカッチリとした操作感が特徴。スバル BRZとの一体感を愉しむなら、3ペダルMT一択だ。
全開にできる楽しさと、限界の先まで見える安心感

水平対向+FRならではの低重心と自然な一体感。思い通りに操ることのできる喜びが、スバル BRZ最大の魅力。思わずワインディングロードへ連れて行きたくなる。
左右へ向きを変えれば、水平対向エンジンによる低重心が際立つ。アクセルペダルを踏み込めば、4000rpmを超えたあたりから気持ちよく吹け上がり、自然吸気ならではのレスポンスが右足へとそのまま返ってくる。
絶対的なパワーは決して大きくないから全開にもできる。そしてアクセルペダルを踏めば踏むほど、クルマが素直に応えてくれる。リアが沈み込みながらもしっかり路面を捉え、狙ったラインをきれいになぞっていく。不思議なことに、自分の運転がうまくなったような錯覚さえ覚える。
限界性能は十分に高い。仮に超えたとしても「何とかなる」と思わせる安心感がある。これは感覚だけではない。スバルらしい高いスタビリティが、このクルマにもきちんと備わっているからだ。
STI Sportはブレンボ製ブレーキによる剛性感も秀逸で、公道ではもちろん、不足を感じる場面はまずない。さらにSTI専用チューニングダンパーはロールを抑えながらも乗り心地は意外なほど穏やか。以前試乗したSグレードよりもしなやかで、荒れた路面でも角が取れている印象。STIらしい味付けである。
いまや2ドアのFR、そしてMTが選べる国産スポーツカーは他にどれだけ残っているか。マツダ ロードスター、日産 フェアレディZ、そしてトヨタ GR86。数えるほどしか存在しない。
取材時、現行BRZは生産終了に伴い販売店在庫のみとなっていたが、すでに改良型「F型」も発表され、予約も始まったていた。さらにその先には新たなコンプリートカーも控えている。その登場ももちろん楽しみだ。しかし、今回あらためて感じたのは、スバル BRZはスペックではなく、運転することそのものを楽しませてくれる、スポーツカーだということ。
スポーツカーとは速さだけではない。理由もなくハンドルを握りたくなること。そして、走り終えたあとに「また乗りたい」と思えること。BRZはその本質をいまも変わらず教えてくれた。

スバル BRZは、絶対的な速さよりも運転することそのものを楽しませてくれるピュアスポーツカー。その他の国産スポーツカーについては、発売中のMotor Magazine2026年9月号をご覧あれ。
スバル BRZ STI Sport 主要諸元
●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1270kg
●エンジン種類:対4 DOHC
●最高出力:173kW(235ps)/7000rpm
●最大トルク:250Nm(25.5kgm)/3700rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●WLTCモード燃費:11.9km/L
●タイヤサイズ:215/40R18
●車両価格(税込):378万4000 円
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