極めて上質、ときどきヤンチャなロードスターの新しい仲間
見た目も走りも、エレエガントかつスポーティ。しかも適度にコンパクトにまとめられた魅力的なクーペとの出会いは、本当に久しぶりだ。
初テストの相棒は「RS」。6速MTとブレンボのキャリパーを装備し、足まわりもややスポーティ寄りのセッティングとなる。試乗時間は110分だが、都心から横浜まで首都高速道路を往復して、その才能の「片鱗」を感じ取ることができた。そして素直に、心ときめいた。
先代のNC型にも電動リトラクタブルハードトップ仕様が設定されていたが、RFでは使いやすさだけでなく、ソフトトップとはひと味違った、より上級の世界観を狙う。
優れた機能性を兼ね備えた美しいファストバックスタイルは、まさにその世界観の象徴だ。運転席から振り返れば、リアウインドウの向こうに、かつてフェラーリが採用していた「トンネルバック」スタイルの風景が広がる。ちょっとディーノな雰囲気は、格別。それは確かに、先代RHTでは味わえなかった感覚だ。
とはいえ、クローズドの状態で首都高速道路を走っている間は、風景も雰囲気も、ソフトトップと大きく変わらない。路面の状態や速度域によってはややタイヤノイズがこもるような感覚があるけれど、乗り心地は良好で直進性にも優れ、リラックスした気分で走ることができた。
デザインと並ぶRFのトピックが、日本仕様初搭載の2Lエンジンだ。最高出力は158psを6000rpmで発揮、最大トルクは200Nm/4600rpmとなる。従来の1.5Lモデルに対して数値上ではパワーで約2割増し、トルクでは3割超増しを実現している。
体感的には、低速域のトルク感よりも、「回すほどに元気」という印象を受けた。2500rpmを超えたあたりからグッとトルク感が増し、アクセルワークに対するツキも俄然鋭くなっていく。逆にそれ以下ではとても穏やかなフィーリング。肩肘張らずに街中を流すには、このくらいの寛容さでちょうどいい。
一般道に降りてしばらく走った後、信号待ちでトップを開けてみた。操作自体はスイッチひとつで約13秒と、実に素早い。10km/hまでは動いていても作動し続けるから、どこでも気ままに開け閉めできるのが嬉しい。信号待ちでたまたま隣にソフトトップ車が並んだので、ススっと閉めてみせてあげた。オトナ気ないけれど、ちょっと鼻が高い。
あらためてオープンにして、凹凸の激しい一般道を走ってみると、クローズド時とはまったく違う。路面の凹凸からの突き上げがダイレクトで、ハンドルにもブルブル感が伝わってくる。首都高速でもオープンクルージングを試してみたが、やはり乗り味が「カタい」。
開発者に後から確認したところでは、タイヤの17インチ化とともに、とくに収納時のリア荷重の変化に対応して、リアのブッシュをやや柔らかめにセットしてあるそう。「RS」のビルシュタイン製ダンパーとは少し合わないようだ。よりマイルドなセッティングの「VS」なら、これほどクローズドとの差が広がらなかっただろう。
それにしても、ワインディングで試せなかったことは、かえすがえすも残念だった。峠道なら、「RS」ならではの魅力が楽しめたはずだ。
上級シフトしたロードスターRFは「成熟した大人の上質な世界観」を謳っているけれど、時にはヤンチャな世界にもしっかり戻ることができそうだ。なにしろ、四六時中「大人」を装うのは、けっこうしんどい。時には思い切り、弾けたい! と思うことだってある。そんな時にはぜひ、RFに付き合ってもらおう。(文:神原久/写真:伊藤嘉啓)
●主要諸元〈ロードスター RF RS〉
全長×全幅×全高=3915×1735×1245mm
ホイールベース=2310mm
車両重量=1100kg
エンジン=直4DOHC 1997cc
最高出力=116kW(158ps)/6000rpm
最大トルク=200Nm(20.4kgm)/4600rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=FR
JC08モード燃費=15.6km/L
タイヤサイズ=205/45R17
車両価格=3,736,800円