ホンダのハイブリッド専用車「インサイト」が3代目にフルモデルチェンジ。流麗なスタイリングながらボディ形状は4ドアセダンを採用。1.5L+2モーターのi-MMDを採用した、その走りっぷりは…?

ミニバンやSUVを卒業したら、セダンに戻ろう!

3代続けてハイブリッド専用車として作られているホンダ・インサイト。先代がフェードアウトしてから5年近くが過ぎ、北米では2018年夏から、日本でも2018年末に発売が開始された。

初代は3ドアクーペ、2代目は5ドアハッチバック、そして今回の3代目もシルエットから察するにヨーロッパで人気の5ドアクーペか…と思いきや、独立したトランクを備える4ドアセダンだった。

これは、コンベンショナルなセダンを好む北米市場を意識してのことだった。ちなみに現時点では、インサイトはヨーロッパで販売される予定はない。

画像: 試乗車は中核グレードのEX。グリルやホイールを専用にブラックメッキした上級グレードのEX ブラックスタイルも設定。

試乗車は中核グレードのEX。グリルやホイールを専用にブラックメッキした上級グレードのEX ブラックスタイルも設定。

車格的には、シビックとアコードの間に位置する。サイズ的にも全長こそ5ナンバー枠の4.7mを切るが全幅は1.8mを超えるし、現行型のメルセデス・ベンツ Cクラスとほぼ同じ大きさ。Dセグメント・セダンと呼んで差し支えないだろう。

クロームバーの入ったフロントグリルや光りものの多いエクステリアは好みの分かれるところだが、兄貴分のクラリティを意識したクーペ風の端正なスタイリングは美しい。

低そうに見える車高も実際は1.4m以上あり、外観から想像されるより室内は広い。身長172cmの筆者が運転席でベストポジションを取り、その後ろに同身長の人が座ってもヘッド&フットスペースに不満はない。奥行き、深さとも十分で519Lの容量を誇るトランクも使い勝手が高そうだ。

画像: 立体的デザインで空力を追求したスタイル。トランクリッド後端のリアスポイラーがリアビューを引き締める。

立体的デザインで空力を追求したスタイル。トランクリッド後端のリアスポイラーがリアビューを引き締める。

カラーリリーという植物をイメージしてデザインされたインパネ形状は、ちょっとユニーク。2眼メーターは左がTFTのマルチインフォメーションディスプレイで、さまざまな情報を表示できる。

シフトセレクターは、レジェンドから始まってNSXやクラリティまで、ホンダ電動車に共通のスイッチ式。インパネまわりの操作系は最近のホンダ車に共通のレイアウトなので、他車から乗り換えても違和感はない。

画像: リアルステッチのソフトパッドなどで上質なインテリア。8インチモニターのカーナビも標準装備。

リアルステッチのソフトパッドなどで上質なインテリア。8インチモニターのカーナビも標準装備。

スタートボタンを押してシステムを起動させる。そう、インサイトはハイブリッド車だから、バッテリー量が十分だったらエンジンはすぐにかからない。

ドライブモードは、クルマがEV/ハイブリッド/エンジンの3つを効果的に使い分ける。ドライバーがSPORT/ECON/NORMAL(これがデフォルト)/EVを切り替えられるスイッチもある。

画像: ステアリングは減速セレクターのパドル付き。オーディオやACCのスイッチも備わり、ブラインド操作もしやすい。

ステアリングは減速セレクターのパドル付き。オーディオやACCのスイッチも備わり、ブラインド操作もしやすい。

発進時はほとんどモーターだけだが、それでも十分なトルクでス〜ッと加速する。さらにアクセルを踏み込むとエンジンが発電を始め、高速クルージングではエンジンのみでも走行する。

その切り換えは極めてスムーズで、高速走行中も頻繁にエンジンはON/OFFされるが、インフォメーションディスプレイのパワーフローを見ていない限りわからない。

画像: 1.5Lエンジン+2モーターのi-MMDは、クラリティPHEVと基本的に同じシステム。市街地でも高速でも高効率だ。

1.5Lエンジン+2モーターのi-MMDは、クラリティPHEVと基本的に同じシステム。市街地でも高速でも高効率だ。

走りの印象は、総じて「爽快」。パワーユニットは静かでスムーズ。エンジンはアコードやステップワゴンの2Lに対し1.5Lにダウンサイズされたが、アルミ製ボンネットなどの採用で軽量化され、パワー的に不満はない。

また、減速度を3段階にコントロールできるセレクターも備わっているが、市街地走行では違いはわかりにくい。下り坂でエンジンブレーキを使いたいときなどには効果的だが、それ以外では使う機会は少なそうだ。

画像: 本革はオプションだが、前席は電動アジャストでヒーター内蔵。後席もヘッド&フットスペースとも十分で快適。

本革はオプションだが、前席は電動アジャストでヒーター内蔵。後席もヘッド&フットスペースとも十分で快適。

今回、約90kmの試乗で平均燃費は19.5km/L。大半が高速道路で、残りが郊外路と撮影のための移動。エアコンは入れっぱなしでドライブモードはNORMALのまま。

エコランは一切せず、流れよりは少し早めのペースで…なんて走り方で、この数値。ちょっと気を遣って走れば、WLTCモードの25.6km/Lに近い数値は誰でも出せるだろう。

安全運転支援システムのホンダセンシングは渋滞追従機能付きACC(アダプティブ・クルーズコントロール)くらいしか試していないが、もはや高速走行の必需品。過信は禁物だけれど、確実にレーンをキープして前車との車間も調整し、安心&快適なハイウエイクルージングを楽しむことができる。

画像: 安全運転支援システムのホンダセンシングも標準装備し、乗り心地も良く、高速でも静かで快適だ。

安全運転支援システムのホンダセンシングも標準装備し、乗り心地も良く、高速でも静かで快適だ。

ジャーマンスリーのD/Eセグメント・セダンとクラウン以外、ほとんどセダンが死滅してしまった日本のクルマ社会。そんな中で、セダンとしての本質を維持しながらスタイリッシュにまとめ、装備も充実したインサイトは「セダン回帰」したい人には最適の1台だ。

ライバルのプリウスより価格は少し高めだが、安全&快適装備は標準で充実している。しかも立ち位置は、少し変わった。その端正なスタイルと上質なインテリア、そしてi-MMDによる爽快な走りで、このクルマを選んで間違いないだろう。(文:篠原政明、写真:森 浩輔)

インサイト EX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4675×1820×1410mm
●ホイールベース:2700mm
●重量:1390kg
●パワーユニット:直4DOHC+モーター
●排気量:1496cc
●最高出力:109ps・131ps
●最大トルク:134Nm・267Nm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:横置きFF
●価格:349万9200円(税込み)

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