T8と同じプラグインハイブリッドシステムを搭載
外部電源から充電した電力で走行している間のCO2排出量はゼロと見なされ、平均燃費の底上げが可能となるため、各メーカーが積極的にプラグインハイブリッド(PHEV)を展開している。
ただ、エンジンとモーターのふたつのパワーユニットを持つため構造が複雑となり、同時にコストもかかる。さらにエココンシャスなのか、パフォーマンス重視か、ラグジュアリー志向か実用性追求なのか、今ひとつ立ち位置がわかりにくいことも多いように思う。
その点、わかりやすいのがボルボだ。このメーカーはシリンダー数が少ない方が高効率を追求しやすいと、生産するエンジンを4気筒までと早々と決めてしまった。そしてターボやスーパーチャージャーなどの過給方式を用意することで出力の異なるバリエーションを作り出しているのだが、これにモーターを組み合わせることによって、各シリーズのトップパフォーマンスモデルに据えているのが、T8ツインエンジンAWDと呼ばれるPHEVなのである。
T8ツインエンジンは、ターボとスーパーチャージャーの過給機を備える318ps(V90は320ps)/400Nmの2L 4気筒エンジンで前輪を、87ps/240Nmのモーターで後輪を駆動する電気式のAWDだ。プロペラシャフトの必要がないため、その空間、車体中央のフロアトンネルにリチウムイオンバッテリーを置き、重量配分の最適化や衝突時の安全性確保もできるという、合理的な設計を特徴としている。
そんなボルボのPHEVに、もうひとつのバリエーションが加わった。登場当初からその存在が明らかになっていたV60 T6ツインエンジンがいよいよ本格的に上陸を開始したのだ。
減税や補助金を考慮するとかなりバリューな価格設定だ
このT6は、出力こそ控えめな253ps/350Nmとしているものの、ターボとスーパーチャージャーによるツインチャージのエンジン機構や、後輪駆動用のモーターなど構成はT8とまったく同じ。つまりかかっている手間はT8と同じにもかかわらず、価格をかなり手頃なレベルに留めた、戦略的モデルというわけである。
価格設定をもう少し具体的に見て行こう。V60にも高出力版のT8ツインエンジンAWDは設定されており、これが819万円。一方のT6ツインエンジンAWDはトリムレベルが同じ最上級のインスクリプションで749万円と70万円も安く設定されているのだ。
さらにこのT6には、装備を少し簡略化し、内装もカジュアルな仕上げとしたモメンタムグレードも用意されており、659万円というバリューな価格を実現している。PHEVはエコカー減税やCEV補助金の対象ともなるので、600万円そこそこで手に入ることになるわけである。ちなみに今回試乗したのは、上級トリムレベルのT6ツインエンジンAWDインスクリプションである。
V60は車重が軽いこともあり、ドライブフィールは以前試したV90などのT8ツインエンジンと大きな開きは感じなかった。回転し始めると同時に最大トルクを出す後輪駆動用モーターのおかげでスタートダッシュは非常にシャープ。ピュアエンジンのT5だと回転の上昇と共に車速が乗って行く感じだが、そうした待ちがないのがツインエンジンの魅力である。
しかもこのクルマ、バッテリー走行を優先させる「ピュア」や、クルマ任せで最大効率が得られる「ハイブリッド」など、走行モードを切り替えて、走るシーンやエネルギーのマネジメントを変えられる楽しみもある。
その辺のことは、とてもこの紙幅では書きつくせない。いずれじっくりと走り込んで、その経済性も含めて改めてレポートしようと考えている。(文:石川芳雄)
■ボルボV60 T6ツインエンジンAWDインスクリプション主要諸元
●全長×全幅×全高=4760×1850×1435mm
●ホイールベース=2780mm
●車両重量=2050kg
●エンジン= 直4DOHCターボ+スーパーチャージャー
●排気量=1968cc
●最高出力=253ps/5500rpm
●最大トルク=350Nm/1700-5000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=749万円