1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「カローラFX(AE82)」だ。

トヨタ カローラFX(AE82型・1984年10月発売)

画像: Bピラーより前は5ドアリフトバックと基本的に共通だが、ボディ後半を切り詰めてハッチバック化。

Bピラーより前は5ドアリフトバックと基本的に共通だが、ボディ後半を切り詰めてハッチバック化。

AE86レビン/トレノの登場から約1年5カ月後の1984年(昭和59年)10月、トヨタはカローラのラインアップに新たなモデルを加えた。それがFF 2ボックスのカローラFXだ。カローラのラインアップには以前からリフトバックと呼ばれる5ドアハッチバックも存在したが、VWゴルフのような、いわゆるコンベンショナルな2ボックス スタイルのモデルは、このFXが初めてだった。

FXとは、Future(未来)と未知数を意味するXとを組み合わせた造語であるという。ちなみに、FXはカローラのみにラインアップされ、姉妹車のスプリンターには設定されなかった。

カローラFXは、AE86レビン/トレノの向こうを張って、カローラのFFスポーツとして誕生した。発表はシビックSiに先んずることわずかに11日だが、国産2ボックスで初めてDOHCを搭載した記念すべきモデルとなった。

画像: GTには文字盤がオレンジの専用メーターを装備。ステアリングもGT専用の本革巻きとなる。

GTには文字盤がオレンジの専用メーターを装備。ステアリングもGT専用の本革巻きとなる。

AE82系カローラ5ドア(リフトバック)の全長を165mmも切り詰めた軽快なハッチバックボディはCd値=0.34と、国産2ボックスとしてはトップクラスの空力特性を備えていた。

トップグレードのGTのエンジンは4A-GEU型を横置き搭載用に改良した4A-GELU型で、これはMR2のユニットと基本的に同一のもの。最高出力130ps/6600rpm、最大トルク15.2kgm/5200rpmというパワースペックは、発生回転数まで同じだ。もっとも、このスペックはAE86用の4A-GEU型でもまったく同じなのだが。

4A-G系の優れた特性のひとつでもあるシャープな吹け上がりを「アイドリングの800rpmから許容回転数の7700rpmまでわずか0.99秒で到達する」と誇っていた。

画像: フロントに横置き搭載された4A-GELU。エンジンルーム内にはパフォーマンスロッドも装着。

フロントに横置き搭載された4A-GELU。エンジンルーム内にはパフォーマンスロッドも装着。

サスペンション形式は基本的にFFカローラと同じ4輪ストラットだが、バネ定数、ショックアブソーバーの減衰力、そしてスタビライザー径をチューンしており、さらにGTにはパフォーマンスロッドを装着してボディ剛性のアップも図られた。

また、フロントに大径ベンチレーテッドディスクを備えた4輪ディスクブレーキや、ルーフスポイラーがGTの専用装備となり、タイヤサイズも185/60R14をオプション設定するなど「サーキットでも狙ったラインを確実にトレースする小気味良いフットワークが楽しめる」1台に仕上がっていた。

グループA仕様のレーシングマシンとなったカローラFXは、全日本ツーリングカー選手権でシビックSiと鎬を削り合うなど、さまざまなモータースポーツシーンで活躍した。

画像: FXには5ドアも設定されていたが、DOHCを搭載するGTは3ドアのみだった。

FXには5ドアも設定されていたが、DOHCを搭載するGTは3ドアのみだった。

ボーイズレーサー伝

トヨタ カローラFX 3ドア1600GT(1984年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3970×1655×1380mm
●ホイールベース:2430mm
●重量:930kg
●エンジン型式・種類:4A-GELU型・直4 DOHC
●排気量:1587cc
●最高出力:130ps/6600rpm
●最大トルク:15.2kgm/5200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70HR13
●価格:136万5000円

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