クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第49回は「フェラーリ F355」だ。

フェラーリ F355(1994-1999年)

画像: 348のデザインエレメントを生かしながら、空力の洗練など近代化を図る。348のアイコンでもあったサイドのフィンを捨て、すっきりした印象が強い。

348のデザインエレメントを生かしながら、空力の洗練など近代化を図る。348のアイコンでもあったサイドのフィンを捨て、すっきりした印象が強い。

以前にもこの連載企画で述べたが、フェラーリは、とくにV8エンジンを搭載した小型フェラーリは、2世代ごとに大きく変更されたフルモデルチェンジを行う。たとえば、308から328への変更は正常進化であったが、328から348へはドラスティックな、まさにフルモデルチェンジといえるものだった。したがって、今回の348からF355への変更も、正常進化といえるものだろう。

さて、F355は348の後継モデルとして、1994年のジュネーブ モーターショーで一般公開された。車名のFはフェラーリを(この頃のフェラーリはF512Mもそうだったが、車名の初めにFを付けることが多かった)、355は3.5Lの5気筒でも1気筒あたりの排気量でもなく、3.5Lの5バルブDOHCを搭載していることに由来している。

フェラーリの伝統を当時のテイストで近代的にアレンジして好評価を得たデザインは、当時のフェラーリ他車と同様、ピニンファリーナが手がけたもの。348で特徴的だったテスタロッサ風のサイドのエアインテークフィンなどは排され、シンプルで美しいものとなった。また、ディーノ206から小型フェラーリに採用されていた、コクピット後ろのエンジン部分をルーフからトンネル風に覆うトンネルバックスタイルは、このF355までしか採用されていない。

画像: パワーアシスト付きラック&ピニオンステアリングと6速MTを組み合わせる。シートとトリムはコノリーレーザー張りで上質感を演出。

パワーアシスト付きラック&ピニオンステアリングと6速MTを組み合わせる。シートとトリムはコノリーレーザー張りで上質感を演出。

リアミッドに縦置きされるエンジンは、新開発の3.5L V型8気筒。前述のように5バルブ(吸気3/排気2)DOHCヘッドの採用で、最高出力は380ps、最大トルクは37.0kgmというパワースペックを発生した。1リッターあたりの出力は109psというハイパワーで、先代の348よりは排気量が91ccアップされているので単純比較はできないが、5バルブ化と高圧縮比などにより、最高出力は60psもアップされていた。公称最高速度は348より15km/h速い295km/hとしている。

シャシは鋼管サブフレーム付きのスチール製モノコック。これにアルミニウムとスチール製のボディを架装するが、F355は前後のダウンフォースを均一化するアンダートレイを採用するなど、とくにアンダーボディに重点を置いた空力改善策が施されている。

インテリアでは、本革で覆われたダッシュボードにSRSエアバッグ内蔵のステアリング(パワーアシスト付き)、レカロ製シートの採用など、12気筒モデルに匹敵するような質感の向上と装備の充実が図られている。

F355シリーズのクーペは348までのGTBではなく、ベルリネッタ(イタリア語のクーペ)と名づけられた。またタルガトップのGTS(この名は継承された)やフルオープンボディのスパイダーもラインアップされ、いずれも高い人気を誇った。1997年にはセミATの「F1マチック」搭載車も設定された。

画像: タルガトップのGTSも高人気だった。テールランプは348とは異なりフェラーリ伝統の丸型を踏襲している。

タルガトップのGTSも高人気だった。テールランプは348とは異なりフェラーリ伝統の丸型を踏襲している。

フェラーリ F355ベルリネッタ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4250×1900×1170mm
●ホイールベース:2450mm
●重量:1440kg
●エンジン種類:90度V8 DOHC
●排気量:3495cc
●最高出力:380ps/8250rpm
●最大トルク:37.0kgm/6000rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD(ミッションは横置き)
●トランスミッション:6速MT
●タイヤサイズ:前225/40ZR17、後285/40ZR17
●当時の価格:1490万円

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