見た目の変化より中身の充実化を目指した
デビュー以来初めてアップデートされたボルボXC90。一見して「どこが変わったの?」と思う人も少なくないはずである。今回の改良は、好評なエクステリアやインテリアは小変更にどどまり、目に見えない部分の熟成や安全機能の充実が中心となった。つまり、見た目より中味が進化したのだ。
ちなみにエクステリアでは、新デザインとなったグリルとアイアンマーク、そしてインテリアは、T8ツインエンジンに新デザインのオレフォス社製クリスタルシフトノブが採用されるなどが視覚的にすぐにわかる変更部分である。しかしそれ以外に大きな変更はなく、キープコンセプトだ。
では目に見えない部分はどう変わったのか。まずはT8ツインエンジンに搭載される駆動用リチウムイオンバッテリーの進化があげられる。容量が30Ahから34Ahに拡大され、EV走行距離が従来の35.4kmから40.4kmに拡大したのである。またバッテリーのマネージメントも進化しているように感じられ、「ピュア」モードでのEV走行距離は、より実用的な距離を実現している。
そして先進の安全・運転支援システム(ADAS)の充実も特筆すべきポイントである。ボルボのADASをパッケージしたインテリセーフが標準装備であることに変わりはないが、その中味が進化した。
具体的にはシティセーフティ(衝突回避・被害軽減ブレーキシステム)に「ステアリングサポート(衝突回避支援機能)」と「衝突回避・被害軽減ブレーキ付CTA(クロストラフィックアラート)」が追加されたのだ。
前者は、被害軽減ブレーキだけで衝突を回避できない場合、ドライバーのハンドル操作が障害物の回避に不十分であれば、適切な操作量を確保できるようハンドル操作を補助すると同時に前後輪のブレーキを作動させ緊急回避操作を安全に行えるように支援するという機能である。
そして後者は、駐車スペースなどからの後退時に、リアバンパーに内蔵されたミリ波レーダーによって接近する車両、歩行者、サイクリストの存在を検知、警告音でドライバーに知らせるとともに必要に応じて被害軽減ブレーキを作動させ衝突の回避、被害を軽減するというものだ。
また駐車操作を支援する「パークアシスト」に被害軽減ブレーキも追加され車両前後の予想進路内に車両や歩行者を検知した場合、自動的にブレーキがかかるようになった。
モーターとエンジンが協調した走りは魅力的
ボルボのPHEVは、Motor Magazine誌で長期テスト車に導入していたこともあり、かなり多くの試乗を重ねている。そのメリットは十分に知っているつもりだ。自宅や勤務先、そして行動範囲の中で充電施設があり、マメに充電すればするほどそのメリットを味わうことができる。
走り出しをモーターがアシストし、エンジンに切り替わってもその走行フィールは実にスマート。モーターとエンジンの協調も実に見事である。
電動化に積極的なボルボは今後、新しい電動化モデルの日本市場への導入が控えている。ただしその実力は今のところ未知数である。しかし、このT8ツインエンジンの完成度を知ると「そんな心配は無用」なのかもしれない。(文:千葉知充/写真:永元秀和)
■ボルボ XC90 T8ツインエンジン AWD インスクリプション主要諸元
エンジン=直4DOHCターボ+スーパーチャージャー+モーター
総排気量=1968cc
最高出力=233kW(318ps)/6000rpm
最大トルク=400Nm(40.8kgm)/2200-5400rpm
燃料・タンク容量=プレミアム・70L
WLTCモード燃費=12.8 km/L
全長×全幅×全高=4950×1960×1760mm
ホイールベース=2985mm
車両重量=2370kg
ラゲッジルーム容量=314/692/1868L
駆動方式4WD
トランスミッション=8速AT
タイヤサイズ=275/40R21
車両価格=11,290,000円
※モーター=型式/種類=T28(前)AD2(後)/交流同期電動機、最高出力=34kW/2500rpm(前) 65kW/7000rpm(後)、最大トルク=160Nm/0-2500rpm(前)240Nm/0-3000rpm(後)、バッテリー種類=リチウムイオン電池、電圧/容量=350V/34Ah