2006年12月に2代目ボルボC70が3分割リトラクタブルハードトップを備えて日本で発表されている。この4シータークーぺカブリオレに、ボルボらしさはどう盛り込まれていたのか。上陸まもなく行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年4月号より)

美しいルーフラインを作り出す3分割リトラクタブルハードトップ

日本のボルボは昨年、ちょっとつらい目に遭った。それまで販売の2割を占めていたスバル系ディーラーが、手を引いてしまったのだ。すぐにヤナセが参入したものの大幅な販売減は避けられず、2006年の販売は対前年比20%ダウンで1万0693台に留まった。もっとも販売減の原因は販売網だけにあるわけではなく、商品の側にもあった。モデル末期のものが多かったのだ。そんな状況でも1万台を確保したのだから、見方によっては「日本でのボルボ人気は根強い」とも言えるだろう。

さて、2006年は「我慢の1年」だったが、今年は反攻に打って出ることになる。超ベテラン広報マンが言うところの「この20数年来なかったニューモデル攻勢」は、社内では「3プラス2プロジェクト」と呼ばれているそうで、上半期に3台、下半期に2台、計5台のニューモデルを投入すると言う。

1台目は1月にデリバリーが始まったS80、そして2台目がここで紹介するC70だ。ちなみに上半期のもう1台はC30。そして下半期の2台は、3月上旬のジュネーブショーで発表される新型V70とXC70ではないかと予想される。上半期は量販が期待できるモデルではないが、下半期に新型V70日本投入ということになれば、これはインポーターにとって非常に心強いだろう。

本題に入ろう。数は出なくても「ブランド強化のため重要な役割を担う」と言うC70は、随所に「なるほどボルボ」と思わせるところがある。まずは安全装備だが、世界初のドア内蔵インフレータブルカーテン(頭部側面衝撃吸収エアバッグ)を採用。さらにROPSバー(横転時の乗員保護システム)は、従来モデルより大幅に作動時間が短くされ、またルーフクローズド時でもリアガラスを突き破って飛び出す。さすが世界でもっとも安全なカブリオレを目指したと言うだけのことはある。

次にスタイリングだが、これはリトラクタブルハードトップを「3分割」にした効果がはっきりと出ている。ハードトップを閉めてクーペにしたとき、実に美しいルーフラインが現れるのだ。2分割ではルーフパネルの1枚1枚が長くなってしまうため、こうしたラインが出せないそうだ。数の多さで言えば、フォルクスワーゲン イオスが5分割で上を行っているが、3分割でも十分に美しい。

また、リトラクタブルハードトップの場合、トランクルームの容量が気になるが、C70はクーペ時に約400Lでカブリオレ時が約200Lとなる。クーペ時の400Lというのは、かなり広い。1泊2日レベルの4人分の荷物は楽々収納できるだろう。

荷物が積めても人が窮屈では仕方ないがリアシートも広いので、定員(4名)乗車でのロングドライブもまったく問題ない。大人4人でも大丈夫だ。

インパネまわりは、S40&V50と基本的に共通なのでゴージャスとは言えないが、このスカンジナビアンデザインには好感が持てる。スタイリング同様にインテリアデザインについても、ボルボアイデンティティがすっかり定着したように思う。

画像: ルーフは3分割。開閉は電動モーター、油圧ポンプにより約30秒で行われる。ルーフを閉じると、ボディ剛性はオープン時よりも15%向上する。

ルーフは3分割。開閉は電動モーター、油圧ポンプにより約30秒で行われる。ルーフを閉じると、ボディ剛性はオープン時よりも15%向上する。

220psと140psの差は数字ほどには感じられない

試乗に多くの時間を割いたのは、2つ用意されたグレードの上級版「T-5」だ。2.5Lの直5DOHCターボエンジンを横置きにする。パワースペックは最高出力220ps/最大トルク32.6kgmとハイレベルだが、走り出してまず感じるのは静かで滑らかであるということ。その数字から想像するようなパワー感はなかった。出だしではもう少しトルクが欲しいと感じた。

なぜだろうかと考えてみたが、これはこのボディサイズにしては重めな1730kgという重量のためだろうと思い至った。この重量は充実した安全装備、ボディ強化などの結果であるから、決してマイナス点ではない。クルマの個性として受け取るべきものだろう。

ボディの剛性感は高い。オープン時でも、しっかりしている。また、足まわりはよく粘る。コーナーでスピードを上げたら上げたなりに、しっかりと路面を捉えていることが実感できる。ハンドリングはスポーティなドイツ車などとは一線を画す落ち着いたもので、懐の深さを感じさせる。

T-5の後に、140psの自然吸気エンジンを搭載するC70にも乗ったが、数字の違いほどパワー感に差はなかった。このクルマには必要にして十分なパワーで、全体的なバランスもよく感じられた。車重は10kg軽いだけなのだが軽快感があったのは、エンジンが自然吸気でアクセルペダルの踏み込みにリニアに反応してくれるからだろうか。

ボルボとしては亜流と思われがちなモデルのC70だが、色々な面で「いかにもボルボ」と感じられたことは元ボルボオーナーとしては嬉しかった。今年の反攻は大いに期待できそうだ。(文:荒川雅之 /Motor Magazine 2007年4月号より)

画像: まずクーペとしてのデザインが行われたと言う。それからカブリオレとして必要な手直しをした。このアプローチ法がベストであると、ボルボのデザインリーダーは語っている。

まずクーペとしてのデザインが行われたと言う。それからカブリオレとして必要な手直しをした。このアプローチ法がベストであると、ボルボのデザインリーダーは語っている。

ヒットの法則

ボルボ C70 T-5 主要諸元

●全長×全幅×全高:4580×1835×1405mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●排気量:2521cc
●最高出力:220ps/5000rpm
●最大トルク:320Nm/1500-4800rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:545万円(2007年)

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