ヴァリアントに待望の「V6+4MOTION+DSG」
パサート・ヴァリアントV6 4MOTIONの販売が好調と伝えられている。生産スケジュールの関係から、販売が少し遅れたが、やはり待ち望んでいたファンが多かったということだ。
たしかに、4MOTIONとヴァリアントの組み合わせだけでも魅力的であり、しかもエンジンは余裕のある250ps3.2L V6、それも超狭角コンパクトな新設計FSIときている。加えて、トランスミッションにはDSGが組み合わされているのだから、まさに魅力満載、日本市場にはピッタリと言っていいだろう。とくにウインタースポーツを愛するユーザーにとっては願ってもないモデル。彼らには仲間と一緒に長距離を走れる、タフで安心できるクルマが必要だからだ。
そこで今回は荷物をどっさりと積み込んで1月下旬の白馬八方までロングツーリングを試みた。雪道を想定して、タイヤはミシュランのスタッドレス、X-ICEを装着した。
暖冬のせいか、中央道・長野道にまったく雪はなし。3.2Lエンジンはトルクに厚みがあって、しかもフラットなので、高速走行でとても使いやすく快適だ。高回転まで引っ張ると独特のノイズを発生するが、巡航時はいたって静か。ことさらに個性や存在を主張しないが、いかにもパサートらしく、しっかりと仕事をするタイプだ。
6速DSGはパドルシフトを装備しないが、ゆったりと快適な走りを身上とするパサートに必要性を感じることはないだろう。それよりもむしろ、Dレンジで効率の良さとシフトスケジュールの巧みさを感じながらのドライブが似合っている。いざとなれば、もちろんシフトレバー操作でマニュアルシフトも楽しめるわけだから。
走りはゴルフとはひと味違う、Dセグメントのアッパーミドルらしい落ち着きのあるものだ。基本的な考え方は同じでも、ボディの作り、ホイールベース、サスペンションのセッティングの違いから、そのフィーリングは大きく変わってくるものだ。
長野道・豊科ICを降りて、大町を過ぎたあたりから、ようやく雪が姿を現し始めたと思ったら、一気に銀世界へと変わる。しかし、それまで見せていた抜群の直進安定性と安心感はなんら変わることがない。ノーズの動きは軽快なのに、走りそのものがどっしりしているのは、4MOTIONが効いているのだろう。
久しぶりの雪に少しばかり羽目を外して、雪や氷の上でハンドリングを楽しんでみたが、その安定性とともにスポーティな動きも見せることに驚いた。安全なところでESPを解除して走ってみると、オーバーステアの豪快な走りまで楽しむことができた。「4WDはアンダーステアばかりでつまらない」という既成概念は大きな誤解でもある。
既成概念と言えば、パサートはある意味、セグメントの概念を超えた、不思議な存在だと思う。居住&ラゲッジスペースはDセグをはるかに超えてEセグメントに迫り、インテリアの質感や装備はもはやEセグメントグ並み、それでいて価格はむしろDセグメントのライバルよりも低いといった具合だ。
考えてみれば、フォルクスワーゲン自身、高級とかプレミアムとか、Dセグメントとか、ましてやライバルはなにかなどと口にしたりしていない。あるがままに、パサートという個性を主張するだけだ。そこがなんともフォルクスワーゲンらしいところ。パサートはパサート・セグメントなのである。(文:松本雅弘/Motor Magazine 2007年4月号より)
フォルクスワーゲン パサート ヴァリアント V6 4MOTION 主要諸元
●全長×全幅×全高:4785×1820×1530mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1740kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3168cc
●最高出力:250ps/6250rpm
●最大トルク:325Nm/2750rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:4WD
●車両価格:459万円(2007年)