キャデラック CTS(2003年)
キャデラックから、久しぶりのブランニュー モデル「CTS」が発表されたのは2001年のフランクフルト モーターショー。それから約1年半、いよいよ日本にも導入されることになった。
ここのところ高級FFサルーンばかりを送り出していたキャデラックだが、今回のCTSはまったく違うクルマだ。そのスタイリングは、キャデラックの新しいデザインテーマ「アート & サイエンス」を具現化したという。全体的にエッジが効いていて、直線が効果的に用いられている。縦型ヘッドランプの目つきも鋭い。フロントの格子状グリルや伝統のエンブレムがなければ、キャデラックのクルマとは思えないだろう。
久しぶりの後輪駆動(FR)車だから、当然ながらプラットフォームも新開発で、「シグマ アーキテクチャー」と呼ばれるものが採用されている。エンジンは、ヨーロッパGMやオペルが採用していた3LのV6を3.2Lに拡大したものと、新開発の2.6L V6を設定。ちなみに、後者は日本やヨーロッパなどに向けたパワーユニットだ。トランスミッションは5速ATと、アメリカ車では珍しく5速MTも用意される。日本仕様にはどちらのエンジンも搭載されるが、トランスミッションは5速ATのみ。
エクステリアは独特のスタイリングだが、インテリアのデザインは比較的オーソドックスだ。ステアリングはウッドと本革のコンビ、ATのノブなどにもウッドパーツを用いているが、インパネまわりはプラスティッキーな印象が強く、あまり「キャデラック」らしくない。本革シートはホールド感も良くてスポーティだし、インパネまわりだけはもう少し頑張って欲しかったところだ。
新開発の2.6L V6エンジンはレスポンシブで小気味良い。低速からトルクたっぷりというほどではないが、十分以上な厚みを感じさせる。5速ATはアメリカ車ゆえ、マニュアルモードなどは備わっていないが、スポーティセダンを謳うなら設定してもらいたいところ。もっとも、本国仕様には前述のようにMTも設定されている。前後席とも乗り心地は良く、静粛性も高い。
3.2Lは、2.6Lよりもさらにトルクフルだ。2.6Lでも十分だと思われたが、3.2Lに乗り換えるとアメリカ車らしい余裕が感じられた。キャデラック本来のイメージには、こちらのほうが合っているのかもしれない。
ニュルブルクリンクで走りを鍛えたというだけあって、ボディ剛性は高く、ハンドリングも思ったとおりのコーナリングラインをトレースできる。印象としては、アメリカ車というよりもドイツのスポーティセダンのようだ。そう思わせるということは、キャデラックの意図は成功しているのだろう。
CTSは、ヨーロッパのEセグメント、つまりメルセデス・ベンツ EクラスやBMW 5シリーズをターゲットに開発された。パフォーマンス的には互角ながら、車両価格はライバルよりも安い。アッパーミドルの輸入スポーティセダンで、人と違ったモデルを探しているなら、キャデラック CTSは良い選択かもしれない。
■キャデラック CTS 3.2 主要諸元
●全長×全幅×全高:4850×1795×1460mm
●ホイールベース:2880mm
●車両重量:1660kg
●エンジン形式:V6・DOHC・FR
●排気量:3174cc
●最高出力:164kW(223ps)/6000rpm
●最大トルク:298Nm(30.4kgm)/3400rpm
●トランスミッション:5速AT
●タイヤ:225/50R17
●車両価格(当時):595万円