大ヒットモデル マカンシリーズに「GTS」が加わり、ラインナップが完成した。このモデルは価格的にはマカンSとマカンターボの間を埋めるポジションだが、それだけではなく実力と人気も相当に高い。(Motor Magazine 2020年12月号より)

マカンGTSの乗り心地も特筆に値する部分である

試乗車はステアリングホイール右内側のロータリースイッチで走行モードを「ノーマル」「スポーツ」「スポーツ+」「インディビデュアル」の4パターンに切り替えられる上に、中央のスポーツレスポンススイッチを押すと20秒間オーバーブーストとなるスポーツクロノパッケージを装備していた。

ワインディング路に入ったところでスポーツ+に移行すると、排気音がグンと野太く、アクセルペダルやシフトレスポンスはさらに鋭くなり、標準装備のPASMもタイトなセッティングとなった。

4000rpmから上の高回転域はまさにGTSの本領発揮という感じ。380psのピークパワーは6800rpmのリミット直前まで維持されるようだが、トルクの落ち込みなど一切感じさせずに直線的にフケ上がって行く様はなんとも刺激的だ。

コーナリングでの軽快な動きという点では、足まわりのセットがもう少しマイルドで挙動変化も大きいマカンやマカンSの方がわかりやすいかも知れない。スポーツ+でのGTSはボディの動きは制約され、代わりにガシッとした接地感が際立って来る。この逞しさこそが魅力と言えよう。

マカンの電子制御式4WDは通常走行時、後輪により多くのトルクを配分するセッティングだ。今回乗ったGTSはその上に、左右後輪のトルク配分も制御するオプションのポルシェベクトリングプラスを装備していた。

それらの効能か、高速ターンではアクセルペダルを踏み増すほどにライントレース能力が高まる感じ。細かいコーナーが続く場面では、持ち前のエンジントルクと、ポルシェならではの操作系の剛性の高さによって、ここでも遅れのない軽快な動きが楽しめた。

もうひとつ、乗り心地の良さも特筆に値する部分である。PASMがハードになるスポーツ+では相応な硬さも感じさせるが、減衰性に優れ、入力を一発でいなしてくれるため不快さはない。標準車から車高をローダウンさせたスポーティなセッティングとは思えない仕上がりだ。ノーマルモードではこれがさらに明確にマイルドになり極めて快適だし、もう少し締まった感じのスポーツモードにも十分な日常性が感じられた。

マカンGTSの最大の魅力がシリーズ中でもっともスポーティな走りのテイストにあるのは疑いようがないが、もうひとつ、外観を引き締めるスポーツデザインパッケージや可変制御式サスペンションなどを標準装備していることでお値頃感がある点も、無視できないチャームポイントなのである。(文:石川芳雄)

画像: マカンターボと同じDGR型2.9L V6ツインターボエンジンだが、こちらの最高出力は380ps、最大トルクは520Nm。

マカンターボと同じDGR型2.9L V6ツインターボエンジンだが、こちらの最高出力は380ps、最大トルクは520Nm。

■ポルシェ マカンGTS主要諸元

●全長×全幅×全高=4686×1926×1609mm
●ホイールベース=2807mm
●車両重量=1910kg(EU準拠)
●エンジン= V6DOHCツインターボ
●総排気量=2894cc
●最高出力=380ps/5200-6700rpm
●最大トルク=520Nm/1750-5000rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=7速DCT(PDK)
●車両価格(税込)=1062万円

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