実用性も高いところが新しい時代のクーペモデル
歴史的なデザインのセルフカバーは、ややもすると後ろ向きな感覚がつきまとうことがある。だが、1シリーズクーペはそのサジ加減が絶妙と言える。マルニやE21型の初代3シリーズあたりを憧れの目で見ていた世代には、かなり刺さるものがあると思うし、そんなことを知らない若い人にも、軽快なクーペとして抵抗なく受け入れられる可能性を感じる。
ハッチバックに比べればドアは長めなものの、駐車場で隣にクルマがいても乗降でとくに不便さは感じない。全幅1750mmはもはやCセグメントとしてはスリムな部類である上に、ドアサイズを適度に抑えているからだ。サッシュレスドアだが、ボディ側のウエザーストリップにガラスが密着したあとのしっかりとした密閉感は、上位モデルとまったく同質。この辺の造りの良さもさすがである。
コクピットは見慣れた1シリーズと基本的に同じ。135iクーペはMスポーツのみの設定で、インパネやコンソールにアルミパネルが多用され、10時10分の握りが太いMスポーツレザーステアリングが採用されている。既存の120iなどと比べればそれなりにスポーティな雰囲気にはなっているが、ドライビングポジションを取った時の乗車感はほとんど変わらない。
クーペのヘッドルームは5ドアに対して前席で15mm、後席では50mmほども小さくなっている。そのせいか、Cセグメントの中ではややタイトだった乗車感がさらに強調された印象はあるものの、実用上はまったく問題ない。
とくに驚かされたのは、意外なほど居心地の良い後席だ。2ドアのため、乗降の際のアクションが大きくなるのは仕方ないが、バックレストを前倒しするレバーがフロントシート肩部にあるので操作性は良いし、後席に収まってしまうとヘッドルームを含めスペース的な余裕も十分。足下空間は5ドアと同様でさほど広くはないものの、クーペ化に伴い着座位置を下げるようなことはしておらず、フロアと座面の高さ関係は適切なまま保たれている。
さらにクーペは乗車定員を4名としたおかげで、リアシートの形状が5ドア用よりも立体的で身体にしっくりと馴染む。居心地ではむしろクーペの方が優れるという印象を持ったほどだ。
野暮を承知でもう少し実用性に触れると、クーペは積載性も優れる。5ドアのラゲッジルーム容量が330Lなのに対して、40Lも大きい370Lを確保しているのだ。これはもちろんノッチバック化により全長が130mm延長されたのが最大の要因。高さ方向の余裕はハッチバックの方が大きいが、クーペは奥行きで容量を稼いでいるというわけだ。さらにこれでも足りない場合は左右60:40の分割スルー機能でリアシート空間も荷室に転用できる。