2008年2月、フィアット500が日本に上陸した。日本でも今なお根強い人気を誇っているが、デビュー当時はどのような評価を受けていたのだろうか。Motor Magazine誌では特別企画を組んで、2007年ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した魅力と実力を検証している。今回はその試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年5月号より)

新型500の登場はフィアット復調の象徴

いよいよ日本に上陸した新型フィアット500。プントにパンダ、グランデプントと「小さなフィアット」はこれまでも日本に度々やっては来た。けれども、昨今これほどまでに注目を集めたフィアット車は、他になかったと言っていいだろう。

全長わずかに3.5mほど。全幅もほんの1.6mプラス。しかも、ボディタイプは「日本市場には向いていない」というのが定説である3ドアハッチバックしか用意されないこのモデルが、しかしこれほどまでに多くの人々の興味を引く理由は、このモデルが単なるパッと出の新型車ではなく、デビュー段階ですでに多くの人々の脳裏に特別なヒストリーが刻み込まれているモデルであるからに他ならないだろう。

1.2Lという排気量のエンジンを搭載するこのモデルが、しかし自ら「500」という車名を名乗るその理由は、1957年に発売され、その後およそ20年間にわたり400万台という数が世に送り出された先代500の存在ゆえだ。

愛らしく丸みを帯びたプロポーションに加え、軽量、コンパクトで圧倒的な経済性も備えるという、当時の実用車として不可欠な多くの特長を身に付けたこの往年のモデルは、母国であるイタリアはもちろん、ヨーロッパ全土、さらにはアメリカでも販売されて、長きにわたり多くの幅広い層の人々に愛されてきた。

そんな先代モデルのデビューから半世紀。そうした時の流れを経てフィアット500というモデルを現代に蘇らせようという思いから生まれたこの新型が、誰の目にも先代モデルの「復刻」を強く感じさせるルックスで登場したのは、当然過ぎるほどに当然と言っても良い事柄だろう。

同時にもう一点、この新しいフィアット500の今のタイミングでのリリースには、「フィアットの復活」というメッセージも含まれているであろうことも興味深いポイントだ。

ほんの数年前までのフィアットの状況は、決して好調と言えるものではなかった。それどころか、GMとの蜜月時代の後にも様々なメーカーとのパートナーシップの噂が絶えなかったこのメーカーの将来は、かつての栄光を知るイタリア人の心をも大いに心配させるものであったに違いない。

だからこそ、そんなフィアットがグランデプントのヒットをきっかけに往年の元気を取り戻したことを象徴する新型500のデビューには、単なる新型車のリリース以上の価値がある。新型フィアット500に対する各市場での盛り上がりの背景には、そんなフィアットの復活に対する賛辞と今後へのさらなる期待感も含まれていると見ても良いのではないだろうか。

もっともそうは言っても今の時代、世界の市場は単なるノスタルジーから生まれたモデルを無条件で受け入れるほどに生易しいものではない。アイデンティティのアピールと共に、現代のニューモデルとして人々が満足できるクオリティや最新レベルの安全性、そしてそんなモデルこその特長ある走りのテイストも期待されて然りであろう。

さらには、フィアット500のようなヨーロッパ生まれのコンパクトカーには、それなりの実用性の高さも不可欠になる。いかに過去の財産が後押ししてくれるとは言え、それだけでは再度の成功をもたらすには不十分だ。

画像: 2008年2月に日本に上陸したフィアット500。1957年に登場した「ヌーヴォ500」の個性を引き継ぎながら時代にあわせてアップデートされた。

2008年2月に日本に上陸したフィアット500。1957年に登場した「ヌーヴォ500」の個性を引き継ぎながら時代にあわせてアップデートされた。

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