第1次石油危機から開発されたディーゼルも搭載
近年のゴルフには、ゴルフ バリアントやゴルフ トゥーランなど、ワゴンやSUV系モデルのほか、さまざまな兄弟車が揃っている。それからすると、初代ゴルフのバリエーションは少なかったともいえるが、それでも興味深いモデル展開がなされていた。
初代ゴルフのバリエーションとして、前回紹介したGTIは最も印象的なものだったが、ゴルフ ディーゼルも重要なモデルだった。その開発の発端は、ゴルフ発売の前年、1973年に起こった第1次石油危機だったといわれる。導入はGTIと同じ1976年のことである。開発が比較的早かったのは、ブロックを共有するガソリンのEA827型1.5Lエンジンが、最初からディーゼルに転用しやすい資質を持っていたからだった。
ゴルフ ディーゼルは、戦前からディーゼル車を設定していたメルセデスは別格として、フランスのプジョーなどとともに、乗用車のディーゼルとしては先駆者的存在だった。エンジンの特性が軽快なことに加え、1979年に第2次石油危機が襲ったこともあり、ランニングコストの安いゴルフ ディーゼルはよく売れた。ゴルフ1だけで100万台以上が生産され、ゴルフ1全体の15%程度を占めた。その後ディーゼルはヨーロッパで普及し、ゴルフもGTIのディーゼル版的なGTDを出すなどしてシェアを伸ばしていった。だが2015年のいわゆる「ディーゼルゲート」を大きな契機に、電動化要請と排ガス規制のゆえにディーゼルそのものが厳しい状況に置かれているのは、時代の流れというものだろう。
いまは電動化に力を注いでいるフォルクスワーゲンだが、じつはゴルフ1でもディーゼル市販化と同じ1976年にEVモデルを製作しており、その後EV技術を磨き続けて、7代目ゴルフではe-ゴルフがカタログモデル化されている。
1979年には、ゴルフ カブリオレ(タイトル写真)が登場している。これはある意味、日本人にもなじみ深いモデルで、1997年まで長く生産されたこともあって、今でも日本の路上で見かけることがある。ゴルフ カブリオレは、ビートル カブリオレに替わる形で導入されたモデルで、先代同様にカルマン社でつくられた。ドイツ流の重厚な幌が特徴で、コンパクトカーでありながらスタイリッシュな雰囲気が持ち味となっている。