2008年のデトロイトショーでデビューしたフォルクスワーゲン パサートCCは、自ら「コンフォートクーペ」を名乗るスタイリッシュな4ドア4シータークーペ。セダン、ヴァリアントに続く「第3のパサート」は、単なるパサートの派生モデルではなく、プレミアムサルーンとして開発された意欲作だった。ここではドイツ・ミュンヘンで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine2008年6月号より)

CCはクーペカブリオレではなくコンフォートクーペ

GLやGT、RS、あるいはGT-Rなど、クルマの名称にはアルファベットが付き物だが、とくに最近はその傾向が強く、巷は略語の洪水である。聞くところではメルセデスはアルファベットの3文字組み合わせを片っ端から商標登録しているらしい。今回紹介するパサートCCもアルファベットが並ぶモデルだが、この名前「CC」は、これまでリトラクタブルハードトップを装備したプジョーなどが頻繁に使ってきた「クーペカブリオレ」ではなくて「コンフォートクーペ」を意味する。

なぜコンフォートなのかと言えば答は簡単、ドアが4枚あるのでリアコンパートメントへの出入りが快適であるからなのだそうである。この点は後で検証することにして、まずはこのパサートCCとはどんなクルマなのか、開発意図はどこにあるのかについて考察してみたい。

フォルクスワーゲンのマーケティングでは、欧州向けにはファミリーカーの典型であるパサートを必要としない人たち、すなわちDINKSや子育てから卒業したベテラン夫婦がターゲット、とあまりかわり映えのしない説明をしている。

しかし本当のところは、このCCは総生産台数の60%をアメリカ市場に送り込むことを目指したクルマで、かつてブランドマネージメントを担当していたヴォルフガング・ベルンハルトが企画、さらに今は去ってしまったがチーフデザイナーであったムルナート・ギュナークの手でほぼ完成していた、旧フォルクスワーゲンマネージメントの遺産というべきモデルなのだ。

もちろん彼らが去った後になって新社長のDr.ヴィンターコルン、そして技術担当重役のDr.ハッケンベルク、さらには新たにチーフデザイナーに就任したダ・シルバなどが最終仕上げを行ったことはいうまでもない。

画像: ボディサイズはパサートセダンと比較するとその大きさがわかる。欧州仕様で比べるとホイールベースは同じとなるが、セダンより全長が+34mm、全幅+35mm、全高-55mmとなっている。

ボディサイズはパサートセダンと比較するとその大きさがわかる。欧州仕様で比べるとホイールベースは同じとなるが、セダンより全長が+34mm、全幅+35mm、全高-55mmとなっている。

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