モアパワーと環境性能を両立させた直噴化
LP560-4という新たなサブネームが与えられたが、モデルの基本的な成り立ちはこれまでと同様である。つまり、アルミニウム製スペースフレームとボディのミッドにアウディ由来のV10エンジンを積み、1993年のディアブロVT以来好んで使われているビスカスカップリング方式の4WDシステムとダブルウイッシュボーン式サスペンションを組み合わせている。
後に比較することになるが、アウディR8がガヤルドの兄弟車と言われる由縁も、この成り立ちにみてとれる。ちなみに新たなサブネームは、LPがカウンタック以来のエンジン縦置きミッドシップを、560は馬力を、4は4WDであることを、各々意味する。
スタイリングのフォルムこそ以前と変わらないものの、フロントおよびリアのデザインは、世界限定20台のスーパースポーツのレヴェントンやフラッグシップであるムルシエラゴLP640と同じイメージが与えられた。
フロントセクションはヘッドライトを小ぶりにしつつ大型で攻撃的なフロントエアロバンパーとすることで迫力が増し、リアセクションは横長のライトやアンダーディフューザーなどにより幅広な雰囲気へと大幅にイメージチェンジを果たした。これぞファイティングブル、これぞランボ、というべき存在感が一層強くなったというのが、いちファンとしての感想である。
対して内装の変化は最小限に留まる。ゲージ類がムルシエラゴと同じテイストとなり、「いかにもアウディっぽい」と酷評を受けたセンターコンソールのスイッチデザインが改められた。日本人にとっての朗報は、ようやくナビゲーションシステム(ケンウッド製のHDD2DINタイプ)が装着されたことくらいだろうか。
見栄えの変身度合いも気になるところだが、スーパースポーツカーのマイナーチェンジにおいて注目すべき点は、やはりその中身であろう。
「最高速度と加速、そしてサウンド」という3つの要素がスーパーカーの魅力であるとヴィンケルマン社長が言い放った通り、さらなる高性能を実現する工夫がエンジン、パワートレーン、シャシのすべてに施されている。
まずはエンジンだ。スーパーカーといえども燃費改善や排ガス対策などをおろそかにすることができない今、モアパワーとの両立を図るべく、ついにV10エンジンは直噴化された。
ボッシュとの共同開発による直噴ユニットを積む5.2L V10は12.5:1という高圧縮比を実現して560ps/540Nmを発揮。同時に燃費の改善と、ガス排出量を18%減らす(エンジン単体では15%、その他3%は軽量化やフリクションロス低減、空力で達成)ことに成功した。
コンベンショナルなHパターン6速マニュアル(グラツィアーノ製)と、オプションで2ペダルの6速ロボタイズドミッシンのeギア(マニエッティマレリ製)が選べるのはこれまで通りだが、eギアはSカムによる回転式変速機構を用いた最新世代へと移行した。これにより、微速域でのマナーと変速時間の短縮(新たに追加されたコルサモードにおいてマイナス40%、つまりシフトアップ時で最速120msとなった)を実現しているという。
VT(ビスカス・トラクション)システムもフロントデファレンシャルを中心に改良を受け、足まわりもNVH改善に向けて大幅に進化した。
シャシの基本構成こそ従来と同じだが、ジオメトリーをはじめ新設計のアルミニウム製キネマティックサスにはビルシュタイン製のニューダンパーシステムと新スプリングが組み合わされている。リアアクスルにはトラックロッドを追加。さらにラバーメタルブッシュを採用することで、ライドコンフォート性能とスポーツドライブ性能の両立を図っている。
軽量化も新型ガヤルドのポイントだ。エンジン単体重量が増えたものの、ミッションやフロントデフ、足まわりの軽量化により従来比20kg減とし、パフォーマンスだけでなく燃費や環境性能の向上にも貢献している。
結果、最高速度は325km/h、0→100km/h加速はなんと3.7秒を叩き出すというから、そのパフォーマンスは前期型ベースのガヤルドスーパーレッジェーラを凌ぐものだと言って良さそうだ。