期待を裏切らないカイエンGTSの爽快な走り
今回のテストにはこのカイエンGTSのお供として、アウディQ7 3.6FSIクワトロ、そしてフォルクスワーゲン トゥアレグV6も用意した。
そう、最初に記したデビュー時の大きな衝撃のもうひとつの要因である、大胆な共有プラットフォームの相手を引き連れていくことで、これら3ブランドのSUV観的なものを同時にあぶり出してみようというわけである。
まず乗り込んだのはカイエンGTS。そのインテリアは全面レザー張りで、アルミニウムのモール、そしてルーフ内張りやドアトリムなどに張られたアルカンターラなどと相まってスポーティな気分を盛り上げている。
実際に走り出しても、期待は裏切られない。V型8気筒直噴ユニットの吸気音を含めたエンジン自体の発するサウンドは、いかにもヌケの良いNAならではの爽快感を演出していて、回転を上下させるのがとにかく楽しい。
引っ張れば回転計の針は6600rpmからのレッドゾーンを超えて6800rpmまで達する。その時の速度は2速で90km/h、3速で140km/h弱という設定で、とくに2速は低め。引っ張って楽しむにはちょうどいいが、ストロークが長く節度も甘いMTのシフトフィールはやや残念だ。
一方、乗り心地はやはり硬めの設定である。といっても小さな入力に対しては思ったよりもしなやかで、大きな入力があると一転、ガツガツとショックを伝えてくる。そのぶん姿勢変化は抑えられていて、元々少ないSUV特有のグラッと傾く感じは、もはやほとんど気にならない。しかし、それと引き換えに、全体を硬めているが故にブッシュ類と思しきヨレ感が逆に強調されて、時折ピクピクと落ち着かない動きが出てしまっているのは、ちょっと気持ち良くない部分である。
それでも、ワインディングロードではまさに水を得た魚。ステアリング操作に対してリニアにノーズをインに向けるニュートラルな応答性は、2.3トンもの車重を忘れさせる。しかもタックインを誘発させれば、安定した動きの中でしっかりとその意思に応えてくれるなど、コントロールする余地をたっぷり残しているから嬉しくなる。
これでもう少し、舵を入れた瞬間の応答性が鋭ければと思ったが、あるいはそれは、試乗車がエアサスペンション仕様だったからかもしれない。よりポルシェらしい走りに期待して、ノーマルのコイルスプリング式サスペンションも試してみたいと感じた。