2008年、モデルサイクル半ばの997型911カレラ/カレラSが大きな進化を遂げた。そのポイントはデュアルクラッチ機構を備えたトランスミッションPDKと直噴ガソリンエンジンDFIの採用。フェイスリフトとは思えない大きな変更は話題となった。なぜ、911カレラ/カレラSはここで大胆な変更を行ったのか。この時、911カレラ/カレラSの走りはどれほど変わったのか。ドイツ・ヴァイザッハで行われたワークショップと国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

その驚くべき中身はフルモデルチェンジに匹敵

多くの人は、スポーツカーメーカーのポルシェを、燃費や環境問題からかけ離れた存在であると思ってはいないだろうか。しかし、それは大きな誤解で、ポルシェはいかに効率よくエンジンを回し、効率よくクルマに仕事させるかを常に考えている。その結果、出した答えがこの新しいカレラ/カレラSに搭載されたPDKとDFIと言っていい。

今回の目玉となるPDKは、デュアルクラッチ機構を備えたトランスミッションである。フォルクスワーゲンのDSGやアウディのSトロニックと基本的には同じコンセプトを持ち、2枚のクラッチが互いに次のギアチェンジの用意をしている。

実は、このデュアルクラッチという考え方を一番最初に開発したメーカーはポルシェで、この技術を1983年にはグループCに参戦するポルシェ956に世界初採用、1984年にはポルシェ962でニュルブルクリンクのレースに初優勝し、1986年にはモンツァの世界選手権で勝利も飾っている。つまり、デュアルクラッチで一番歴史があるのはポルシェというわけだ。20年以上にわたり研究を重ね、満を持して911に投入されたPDKは、ティプトロニックS比で約10kgのダイエットに成功し、さらCO2の排出量は最大で15.2%減少するという。

次に大きなトピックスは新世代のDFI(ダイレクト・フューエル・インジェクション)エンジン、いわゆる直噴エンジンの搭載だ。フリクションを減らすためにピストンリングにも特別なコーティングが施され、構成されるコンポーネンツも40%削減、組み立て時間も短縮されたというこのエンジンは、中心から上に20mm、下に10mmと合計30mmコンパクト化に成功した。そのため重心を低くすることも可能となった。

また、このユニットは、いままでの水平対向の3.6L&3.8Lエンジンのシリンダーやピストン、吸排気系などで従来と共用化しているパーツはほとんどないという力の入れよう。これだけ見ても、フルモデルチェンジを謳ってもいいと思うのだが。

DFI化のメリットは、6kgの削減に成功したエンジン重量にも現れ、PDKと合わせると、軽量化は実に16kgにも達することになる。

新しい911カレラ/カレラSの外観を見てみると、フロントやテール部分にLEDが多用されていることがわかる。とくにテールランプユニットには片側60個のLEDが使われている。その数にも驚かされたが、なにより視認性がいい。後ろから見るとひと目で新型だと判別できる。またドアミラーは大型化され、ダブルアーム式となり視野面積も広がったが、それがエアロダナミクスに及ぼすネガ要素はないという。

画像: テストドライブでは、低速から高速まで快適で安心感ある走りを味わうことができた。

テストドライブでは、低速から高速まで快適で安心感ある走りを味わうことができた。

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