「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前の国産車は環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は「トヨタ SAI」だ。

トヨタ SAI(2009年)

画像: エントリーグレードの「S」でも、HDDナビやリモータッチは標準装備。タイヤは16インチが標準で、オプションで18インチを選べる。

エントリーグレードの「S」でも、HDDナビやリモータッチは標準装備。タイヤは16インチが標準で、オプションで18インチを選べる。

大ヒット作となった新型(編集部註:3代目)プリウスに続くハイブリッド専用車としてデビューしたSAI。トヨタがそこに込めた思いは燃費コンシャスなだけではなく、時代にマッチした新しい「小さな高級車」なのだという。

かつてトヨタにはプログレという小さな高級車があったが、時代を先取りしすぎたようで、当時はクラウンに慣れている人はダウンサイジングに抵抗があり、いくら良いものでも受け入れてもらえなかった。だが、環境意識が高まっている現在では、ダウンサイジングもハイブリッド化も最先端。大きな付加価値を伴った高級車がSAIなのである。ただ、SAIには従来の高級車のような重厚感はない。ハードウエアを共有するレクサス HS250hよりも70kgも軽く造られ、軽快感を大切にしているという。

走り出しは、トヨタのハイブリッドらしい静かでトルクフルな感覚だが、確かに軽快だ。プリウスに比べると200kgほど重いが、電気モーターは143ps(プリウスは60ps)、システム総合では190ps(同100ps)と、倍近くパワフルなので圧倒的にパフォーマンスは高い。それは高速走行でも同様。80km/hから100km/hへの加速などは3L級に近いぐらいの速さをみせる。あまりエンジン回転数を上げなくても十分な加速力だから騒々しくない。プリウスよりも上のクラスだということが、常に意識できる。

直4の2.4Lエンジンは1気筒あたりの排気量が比較的大きく、エンジンの停止・始動を頻繁に繰り返すトヨタのハイブリッドでは振動が心配になるが、それもよく抑えられていた。ただ、それなりに加速している際などは優れているものの、巡航時など加減速がほとんどない状況で、モーターのみの走行からエンジンが再始動する時などは前後Gの変化が察知され、そこは課題だろう。

画像: センターダッシュ上からコンソールに繋がるインテリアの基本デザインもHS250hと似ているが、スイッチ類などは変えられている。

センターダッシュ上からコンソールに繋がるインテリアの基本デザインもHS250hと似ているが、スイッチ類などは変えられている。

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