2008年3月のジュネーブオートサロンで往年のフォルクスワーゲンファンにとって懐かしい名前「シロッコ」が復活した。このモデルは単なる「名車の復刻版」ではく、時代が変わりクーぺ市場も様変わりする中、最先端のメカニズムと次世代のデザインテイストを盛り込んだ新しいチャレンジだった。今回は2008年6月にポルトガル・リスボンで開催されたこの3代目シロッコの国際試乗会を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年8月号より)

ワインディングでも高速でも常に安定感ある走りを見せる

まるで有名タレントのパレードのようだったシティドライブを終えて、ようやく郊外のワインディングロードに到着。さっそく6速DSGをマニュアルプログラムにセットして、ステアリングホイール背後のパドルによる積極的なシフトを開始する。

コーナー手前までスムーズなエンジン回転の上昇を楽しみ、今度はブレーキを踏み込むと同時にギアを一段落とす。そしてクリッピングポイントに向けて、正確でゲインの確かなステアリングホイールを切り込むと、シロッコは非常に安定した姿勢でコーナーを舐めるようにクリアする。実に気持ちのいいコーナリングだ。

こうした感覚はライトウエイトのスポーツクーペならではのもの。調子に乗ってスピードを上げていくと、FFモデルの特性でもあるアンダーステアが顔を出す。しかしスロットルを緩めるとノーズはゆっくりと内側に入り込む。過度なタックインはよほど乱暴なスロットルワークをしない限り起こらない。

またESPのプログラムはできるだけその介入を遅らせているらしく、コーナーではドリフトの姿勢も可能だ。またそんな場合にエンジン回転を落としてしまっても、1700rpmから湧き上がる280Nmの大きなトルクのおかげで即座にスピードを回復することができる。

やがてルートマップは熱くなったドライバーをクーリングのためにポルトガルの高速道路へと導いてゆく。進入路では0→100km/h加速がわずか7.2秒のダッシュ力を生かしてスムーズに流れに乗る。

郊外に出ると前方にかなりのスペースができ、それなりのスピードを出すことができたが、高速域でもシロッコは非常に安定している。またレーンチェンジもステアリングホイールを握った手首のわずかな動きで、ロールもほとんどなくこなしていく。

またゴルフGTIよりも軽いボディに装備された前後ディスクブレーキは、テストを通じて制動力、コントロール性、剛性感の高いペダルフィールと、どの項目でも申し分のない働きを示した。

最後まで気になったのは小さな面積のリアウインドウによる後方視界の悪さで、駐車時はもちろん、一般道路でも追越し時などで後を確認する場合に、もっと大きな窓があったら、と何度か思った。しかしこれは、決定的な弱点ではない。

新型シロッコは、我々日本人がすっかり忘れてしまった、1970年代の終わりから1980年代にかけて持っていたクルマに対する熱さを思い出させてくれるようなオーラを持っている。だが、果たして、現在の我が国の冷え切ったクーペ市場に熱風を巻き起こすことができるかどうかは、天気予報よりもずっと難しい予想である。日本への導入は来春になると見込まれている。(文:木村好宏/Motor Magazine 2008年8月号より)

画像: インパネはイオスから移植。モジュールを活用することで、ドイツでシロッコ2.0TSIはゴルフGTIより安い価格を実現した。

インパネはイオスから移植。モジュールを活用することで、ドイツでシロッコ2.0TSIはゴルフGTIより安い価格を実現した。

ヒットの法則

フォルクスワーゲン シロッコ 2.0TSI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4256×1810×1404mm
●ホイールベース:2578mm
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●最高速:235km/h
●0→100km/h加速:7.2秒
※欧州仕様

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