1974年にデビュー以来、コンパクトFF車のベンチマークであり続けるフォルクスワーゲン ゴルフ。日本でも間もなく8代目となる新型が発表されるが、その前に初代から現行型までのゴルフを振り返ってみたい。今回は、3代目ゴルフのバリエーションについて語ろう。

これが開発されたのは、直列4気筒横置きのFFを用いるゴルフで、大排気量化やマルチシリンダー化を実現するためであり、全長が短く狭いエンジンルームに狭角V型エンジンが難なく収まっていた。

排気量は2.8Lあったが、最高出力は174psと比較的抑えめで、その理由のひとつとして2バルブということがあった。シリンダーヘッドが1つしかなく、その狭いスペースに6気筒を詰め込んでいるので、4バルブにするのが難しかったのだ。カムシャフトはこの1つのヘッドに対して2本あるので、フォルクスワーゲンはこれを「DOHC(ダブル オーバーヘッド カムシャフト)」とアピールしていたが、実際はV型エンジンの両バンク用にカムシャフトが2本あるということなので、事実上はSOHC(シングル・・・)であった。そんなことから、このVR6エンジンは回して痛快なエンジンではなく、トルクこそ太いもののジェントルなエンジンとなっていた。

メーカーもそこは理解しており、GTIの上に来るスポーティなハイパフォーマンスモデルとしては位置づけなかった。ただ、のちの時代にこの狭角V6エンジンは、3.2Lまで拡大され、4バルブ化も実現されることになる。さらに、これを2つ組み合わせて、W型の8/12/16気筒が開発され、グループ内のアウディ、ベントレー、ブガッティなどの高性能化に多大に貢献することになるのだった。

このほか、生産化には至らなかったが、WRC参戦用4WDモデルが1993年頃に試作されており、現在でもフォルクスワーゲンで動態保存されている。A59と呼ばれる試作車は、芳しい活躍ができなかった先代のゴルフ2ベースのラリー ゴルフに替わるべきもので、2Lターボを搭載して275psを発生していた。冷却用の風穴だらけのフロントまわりや、オーバーフェンダー、エアロパーツ類などで武装されたボディワークは競技用マシンして迫力十分で、実戦投入されなかったのは残念であった。(文:武田 隆)

This article is a sponsored article by
''.