2008年、4代目E92型BMW M3クーぺにM-DCT(デュアルクラッチトランスミッション)が搭載されて大きな話題を呼んだ。CO2排出量の問題が叫ばれる中、高回転まで瞬時に、切れ目なく効率よくパワーを伝達する独自の革新的なメカニズムは、ひとつの「切り札」になると言われた。Motor Magazine誌はそのテクノロジーに注目、上陸間もないM3クーぺ M-DCTのフルテストを敢行している。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年10月号より)

加速性を重視したMモデルならではの設定

トランスミッションのギア比にファイナル(デフ)ギア比を掛け合わせたオーバーオールギアレシオを計算し、それを6速MT車の値と比べると一目瞭然だ。

オーバーオールギアレシオは数字が大きい(=ローギアード)ほど「加速重視」傾向で、数字が小さくなる(=ハイギアード)と「経済性重視」というのが一般的な解釈。つまり、このオーバーオールギアレシオを見比べると、狙ったクルマづくりの味付けの違いが伝わってくる。

7速DCT仕様のオーバーオールギアレシオの値を見ると、7速が3.154、6速が3.794と、飛び切り離れているわけでもない(6速MT仕様の6速は3.354)。実際、「最高速は6速でも7速でも得られる」という。7速目を「燃費ギア」と割り切り、最高速は6速で得るという他の多くのDCTに対して、考え方が明確に異なっている。大雑把に言えば「1〜2速間をグンと接近させ、6速をMTの第5速にほぼ相当させる形で残りの各ギアをクロス化」というのが、DCTのギア比の刻み方なのだ。

もうひとつ、M3のDCTで特徴的なのが「ロースピードアシスタント」という他のDCT車には見られないロジックの採用。一旦停止した後にブレーキペダルをリリースすると、通常であれば発生するクリープ力が、M3のDCT車には見られない。コンピューターのマウスを扱うかの如くアクセルペダルを軽くクリックすると、初めてクリープ力を発生させる。すなわちここからも、DCTはATの一種ではなく、あくまでも「進化型のMT」というスタンスが読み取れる。

BMWは、これまでも「SMG」という名称でシングルクラッチ方式の2ペダルMTをリリースしてきた。デュアルクラッチ化によってトルクフローの中断を排除したDCTは、そうした2ペダルMTの「最新バージョン」という捉え方なわけだ。

ただしクリープ力には「あらかじめ駆動系のガタを圧縮しておき、スムーズな発進を可能にする」という副産物がある。M3のDCTも「コンフォート性を高める目的」で、前述のような操作によってこの現象を利用できる設計となっている。

それでも、あくまで「MT派生のアイテム」というスタンスを貫き通し、2ペダルのレイアウトにもかかわらず、通常のMT車と同様の小さなブレーキペダルで視覚的にもそれを明確にアピールするのも、このブランドの作品らしいところだ。

画像: シフトレバーまわりがシンプルに感じられるインテリア。手前に引くシフトパドルは、右側がアップ、左側がダウン。

シフトレバーまわりがシンプルに感じられるインテリア。手前に引くシフトパドルは、右側がアップ、左側がダウン。

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