ラリーで培った「クワトロ」技術を市販車にフィードバック
編集部:中原さんは自らもレースに参戦されているとのことですが、どういう経緯があったのでしょうか?
中原:最初はそんなにモータースポーツに興味があったわけではないのですが、2010年にモータースポーツの担当になってから自分でも走りたくなってしまって・・・カートで勉強してからレース参戦を始めました。いろいろなチームやドライバーと知り合って、現在の仕事にも役立っています。
編集部:アウディとモータースポーツの関係性は、歴史的に見てどのようなものがあるのでしょうか?
中原:アウディというブランド自体、モータースポーツとは切っても切れない関係があります。それは創業者のアウグスト・ホルヒも自らがモータースポーツに参戦していて、そこで得たノウハウをクルマづくりに生かしてきたという経緯です。
そんなホルヒが残した言葉に、「レースは技術の実験室」というものがありますが、限界域の走りで培ったテクニックやパフォーマンスを市販車に反映させていくということをずっと続けてきたのです。
たとえば、1980年代には、「クワトロ」という4WD技術をラリーフィールドで実際に使い、その技術を市販車にもフィードバックしていくことで、今ではアウディの大きな財産となっています。
編集部:そういう意味では、ルマン参戦も大きな意義があるのではないでしょうか?
中原:おっしゃるとおりで、ルマンでは「TDI」というほかがやっていないディーゼルの技術を投入して、そこで勝利することでディーゼルエンジンの価値と可能性を消費者にアピールすることができました。
さらに「eトロン」という電気とのハイブリッド技術もルマンで培われてきたもので、ご存じのように現在では電気自動車にも応用されています。また、ルマンではこれまで13勝という栄冠を勝ち取ってきましたが、これはまさにアウディブランドの信頼性や耐久性を証明するのに、大きな意義を持っていると思います。