走り出してすぐにフラットな乗り心地を実感
今回試乗できたのはV6エンジンを搭載する3.0エクスクルーシブ(セダン)とツアラー(ブレークから改称したワゴン)の2車だった。
まず、セダンに乗り込み軽井沢の別荘地を抜け、鬼押出し方面に向かった。車幅は1860mmあるが、前方視界とシートポジションが適切なので、狭い道でもストレスはさほど感じない。
国道に出て流れに沿って走ると、うーんと納得。C6に近い乗り味だが、そこまでまったりしていない。適度にしゃっきり感がある。日本に導入される新型C5にはハイドラクティブIIIと呼称する、オイルと窒素ガスがコイルスプリングとダンパーの代わりとなって制御するシステムが全車(2Lモデルも)に標準装備される。
このシステムは先代C5がデビューした時に採用されたものの進化・熟成版で、すでに8年の実績があるから信頼性は高い。過去には「ハイドロが壊れて動かない」というシトロエン党の嘆き節をよく聞いたものだが、今は昔の物語といっていい。
センター部分が回らずリムが回転するセンターフィックスステアリングは、エアバッグを常に正しい角度で展開させることと、慣性重量を低減させて上質な操舵感覚を得るのが目的。なんら違和感なく操作性は上々である。
ワインディングロードでペースを上げてもハイドラクティブIIIがいい仕事をしてくれるのがわかる。走行状況によって自動的に、「コンフォート」、「スポーツ」に切り替わりフラットな乗り心地を示す。タイヤは245/45R18のワイドサイズだがその突き上げ感もうまく吸収し、まさしく高級車の趣き。さらに特筆すべきは防音ラミネートガラス採用による静粛性の高さがトップレベルにあるということだ。後から乗ったワゴンボディのツアラーも同様である。
プラットフォームはプジョー407と基本的に同一形式なのだが、まったく別のクルマになっていることを実感。ただ、通常のメカニカルサスペンションに乗り馴れたユーザーがいきなり新型C5で走り出すと、初めはそのふんわり感に少しとまどうかもしれないが、心配は無用。すぐに馴染む。V6の3Lエンジンは排気系が改良され出力で3kW、トルクが55Nmアップし、出力特性、静粛性ともに不満のない仕上がりで、シーケンシャルモード付き6速ATとのマッチングも良好。
ハイドラクティブIIIサスペンションを持つ新型C5はもはやマニアが選択する「特殊なクルマ」ではなくなった。独自の優れた乗り心地を提供する完成度の高いDセグメントカーとなった。これならばアウディA4、フォルクスワーゲンパサート、BMW3シリーズなどの強豪と十分に渡り合える。性能面のみならず、商品力においても「革新的シトロエン車」と断言できる。(文:Motor Magazine編集部/写真:保坂 明)
シトロエン C5 3.0 エクスクルーシブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4795×1860×1470mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1730kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2946cc
●最高出力:155kW(215ps)/6000rpm
●最大トルク:290Nm/3750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●10・15モード燃費:ーkm/L
●タイヤサイズ:245/405R18
●車両価格(税込):479万円(2008年当時)
シトロエン C5 3.0 ツアラー エクスクルーシブ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4845×1860×1490mm
●ホイールベース:2815mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2946cc
●最高出力:155kW(215ps)/6000rpm
●最大トルク:290Nm/3750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・72L
●10・15モード燃費:ーkm/L
●タイヤサイズ:245/405R18
●車両価格(税込):499万円(2008年当時)