アルファロメオのFRセダン、ジュリア スプリントに注目
SUV/クロスオーバーモデルブームの中、「セダン/ステーションワゴンはオワコン」という人もいるが、筆者はそうは思っていない。ここでは、日本車の高級セダン/ステーションワゴンからの乗り換えをも視野に入れた「Dセグメントの輸入プレミアムブランドで500万円以下のモデル」を考えてみた。どのようなモデルが選択できるのだろうか?
まずはセダンからだ。Dセグメントのプレミアムブランドの中で筆者が注目するのは、460万円のアルファロメオ「ジュリア スプリント」である。ジュリアを改めて説明すると、創業から100年を超える名門ブランド再建を目指し、新生アルファロメオ第一弾としてすべてを刷新して開発したファン待望のFRスポーツセダンであると同時に、ドイツ御三家に対してガチンコ勝負を挑んだモデルでもある。
スプリントは、前後異サイズの18インチタイヤ&ホイール、内装はレザーシートと、パッと見ただけではベーシックモデル感が皆無だ。5色のボディカラー(アルファホワイトとアルファレッドを除くメタリックカラーの3色は有償)と2色のインテリアカラー(ブラックとレッド)の選択が可能なのは、いかにもイタリア車らしい。
エンジンは2Lターボ(200ps/330Nm)と8速ATの組み合わせで、スペック的には平凡だが、レッドゾーンまで気持ち良く回るフィーリングなどで感性に訴えてくるあたりは、昔のアルファロメオ車と変わらない。ドライブモード(dna)をd(ダイナミック)モードにすると、よりレスポンスに優れた力強さが増す。パドルシフトは未装備だが、クルマ好きなら自然とマニュアル操作でシフトして走りたくなる。
フットワークは、専用のジョルジオプラットフォームだ。そもそも510ps/600Nmの最強モデル「クアドリフォリオ」まで許容する設計なので、半分以下の出力のスプリントでは余裕たっぷりなのだ。ハンドリングは、切れ味の良い初期応答性に驚くが、前後バランスの良さとスタビリティの高さなどから、不安要素はまったくない。スポーツセダンの魅力を存分に楽しむことができる。
ただし、これらの見える部分/走る部分に対して、装備面では割り切られている。純正ナビゲーションシステムはオプションでも用意されておらず(上級モデルは装備)、先進運転支援システムも必要最小限の装備に留められるなど、誰にでも勧められるモデルではない。だがアルファ75以来、20数年ぶりに復活した純血アルファロメオのFRスポーツセダン、それがこの価格で用意されることを考えれば、些細なこととも思える。
ドイツプレミアム勢も設定。500万円を超えないモデル
一方、より幅広くお勧めできるドイツプレミアム御三家も、アンダー500万円のモデルを用意する。メルセデス・ベンツは、セダンのC180が489万円。外観はCクラスで唯一の16インチタイヤ&ホイール仕様、内装は布シートのみで装備も限定されるがレーダーセーフティパッケージやコマンドコントロールは標準装備だ。
メタリックペイントは有償オプションでの設定となる。1.5Lターボエンジン(156ps/250Nm)と9速ATだが、動力性能に不足感は覚えない。フットワークは、C180は最新モデルながら昔のメルセデス・ベンツ車を思い出す優しい乗り味を備えている。唯一、受注生産モデルなのが難点といえば難点だろう。
BMWは、318iセダンがやはり489.0万円で用意される。これは2020年8月に追加されたベーシックグレードで、エンジンは320iと同じ2Lターボながら性能を抑えたスペック(156ps/250Nm)を搭載。装備は一部を除いて320iとほぼ同等で、デジタルコクピット、ハンズオフ機能付渋滞時運転支援機能を含むドライビングアシストプロフェッショナルもしっかりと装備。16インチのタイヤ&ホイールなのでベーシック感は出てしまうが、鼻先の軽快さに加えて自然なハンドリングはまさにFRの教科書的走りだと言っていい。
アウディでは、セダンのA4 35TFSIが455.0万円で設定される。パワートレーンは2Lターボ(150ps/270Nmm)と12Vマイルドハイブリッドの組み合わせだ。外観は上級モデルと異なる部分もあるが、スポーツサスペンション+17インチタイヤ&ホイール採用でベーシック感は希薄である。
駆動方式はFFで、素性の良さに軽い車重も加わり、ダークホース的な走りの良さを備える。内装は液晶メーター/シートヒーター/電動シートなどは未装備だ。先進運転支援システムは必要最小限で、ACCやレーンアシストの設定もない。