日産 GT-R(2010年:イヤーモデル)
R32/33/34の、いわゆる「第2世代のスカイラインGT-R」は、日産独特の四輪駆動制御システム「アテーサE-TS」が、タイヤのグリップ状況を把握し、前後駆動配分を変動させる。そのため、本来の性能を引き出すのはなかなか難しかった。ところがR35 GT-Rは、トランスアクスル方式を採用して、トランスミッションとデフがリアに移動し、重量配分が改善された。これで基本性能が上がり、「誰でも」とは言わないが、そのパフォーマンスを扱えるようになった。
そのGT-Rの2011年モデルが登場し、最高出力は530psにパワーアップ。あの怪物マシン、フェラーリ F40を50psも上回る。トランスアクスル化したとはいえ、トラクション性能でまだミッドシップ車に劣るはずのフロントエンジン車で、制御可能なのだろうか? その進化をサーキットで試すことになった。
大パワー車はタイヤが冷間時だと簡単にホイールスピンしたり、テールスライドしたりして、発進に気を遣うものだ。ところがGT-Rは安心してアクセルを踏み込める。0→100km/hの発進加速は、実測テストで3.0秒を記録した。これはホイールスピン量をコントロールするアテーサなくしてはありえない。ところがコーナーではVDC(いわゆるスピン防止装置)の制御が入り、3000〜4000rpmでエンジンが頭打ちとなる。2011年モデルでさらにグリップが向上した20インチタイヤだが、それでも530psのパワーが簡単にブレークさせてVDCが介入し、エンジン回転を抑えてしまう。
そこで、手元のスイッチでVDCをカットする。通常なら2速で走るタイトコーナーも、トルクが強烈なので、立ち上がりでアクセルを踏み込むと簡単にホイールスピン、そしてテールスライド。カウンターステアを当てたり戻したりが忙しく、コーナー出口までなかなかアクセルを全開にできない。むしろ3速を選んでアクセルを踏み込んだ方が車速が伸びた。それでも全コーナーでパワードリフト状態となる。このクルマで速く走ろうとするなら、オン・ザ・レール的な走りはあり得ないようだ。