電動化の流れが加速する中で、その存在意義が改めて問われているのがクリーンディーゼル車たち。アウディは主力となるDセグメントに、マイルドハイブリッドを採用したディーゼル車を多彩に投入。ここではA4セダン&アバント/A5スポーツバックに試乗した。(Motor Magazine2021年5月号より)

日本市場に異なる2タイプのディーゼルユニットを投入

アウディが、Dセグメントカーとして人気のA4(セダン/アバント)と、A5スポーツバックに、新たにディーゼルエンジン搭載モデルを追加してきた。ドイツ本国では、ディーゼルエンジン車のシェアが10年以上も60%前後と高くなっていた。だが近年はマイルドハイブリッド(MHEV)などの電動化が進み、50%を割り込んでいる。電気モーターの相方はガソリンエンジンが選ばれることが多いからだ。それでも、30~40%程度はディーゼルエンジン車が売れていることも事実である。

アウトバーンのネットワークが発達したドイツでは、ディーゼル車のメリットが最大限に生きてくる。推奨スピードが130km/hのアウトバーンで走り続けても、燃費効率が良いのだ。もう少しスピードを抑えれば、満タンで1000kmオーバーというレンジ(航続距離)も可能である。ビジネスマンの日帰り出張程度なら、途中給油のためにピットインしなくても済む。もちろん経済的に有利だ。ドイツでは軽油とガソリンの価格差はないが、日本ではガソリンより軽油の方が確実に安いから、燃費の良さにプラスして実勢価格面でもディーゼルが有利だ。

同じDセグメントでは、BMWの3シリーズやメルセデス・ベンツのCクラスにも、クリーンディーゼルモデルが用意されている。これまでこのクラスのアウディに、設定がなかったことが不思議だ。だから、というワケでもないだろうけれど、アウディは今回、出力の異なる2タイプのディーゼルユニットを日本市場にも導入した。MHEVなどを組み合わせて、経済性とパフォーマンスのバランスが異なる2L直4ディーゼルターボをラインナップさせたのだ。標準パワー仕様は35TDI、ハイパワー仕様は40TDIと差別化される。ボディタイプはセダンとワゴン、5ドアハッチバックと、ずいぶん賑やかなグレード構成だ。

今回、テストした3台も、バリエーションに富んでいた。まずベーシックなFFセダンであるA4 35TDIアドバンスド。最高出力は163ps、最大トルクは380Nmを発生している。7速DCT(Sトロニック)との組み合わせだが車両重量が1580kgと比較的軽いこととあいまって、加速感にはゆとりがある。もちろんシートバックに背中を押し付けられるような「驚き」は味わえないけれど、日常走行では十分な速さだ。箱根の山道などでは逆に、車重が軽いことが軽快な身のこなしにつながってくれる。標準装着のタイヤ(225/50R17 94Y)も突っ張った感じがなくグリップ感と乗り心地のバランスが優れていた。

画像: 大きく形状が異なるA4 35TDIアドバンスド(左)とアバント 40TDI クワトロ Sラインのフロントバンパー。どちらもマトリクスLEDヘッドライトが似合う。

大きく形状が異なるA4 35TDIアドバンスド(左)とアバント 40TDI クワトロ Sラインのフロントバンパー。どちらもマトリクスLEDヘッドライトが似合う。

ハイパワー仕様×クワトロは数値以上の力強さを体感

もう1台のA4は27ps/20NmほどパワーアップされたTDI(190ps/400Nm)とクワトロを組み合わせたアバント。さらにスポーティな印象のSラインのアレンジが加えられている。数値的にはTDIに対してそれほど大きなアドバンテージがないように思われるかもしれないが、実感される差はかなり大きい。ワゴンボディでしかも4WDだから、車両重量は1700kgに達する。それでもアクセルペダルの踏み込みに対するゲインの立ち上がりがより鋭いこともあって、グイグイと力強く加速していく。

ちなみに標準装着のタイヤサイズは245/40R18なのだが、試乗車に装着されていたのはリムプロテクター付245/35ZR19 93YXLだった。このグリップに余裕のあるタイヤのおかげで ハンドリングも軽快だったので、余計に重量差を感じにくかったのかもしれない。

ただし燃費差は明白だ。WLTCモード燃費では35TDIは17.1km/Lと非常に優秀だが、40TDIは14.6km/Lと異なる。でも十分経済的だけれど、パワーと燃費のバランスで考えればの魅力がやはり光る。4WDの設定がないのは、悩ましいところではあるけれど。

画像: 190ps/400Nmを発揮する「40」系ユニット。

190ps/400Nmを発揮する「40」系ユニット。

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