国際的にはピュアEVと同等に扱われるPHEV
真っ青に輝く伊勢湾の景色を一望したとき、「ああ、旅に出てよかった」と心の底から思った。沖合のほうはかすかに霞んでいるものの、春の陽射しに照らされた島々がくっきりと浮かび上がって見える。朝の漁を終えて港に帰る漁船か、それとも春の海に遊ぶモーターボートなのか、青い水面に長く尾をひく引き波が目に眩しい。大きく息を吸い込めば、清らかな空気で全身が満たされて身も心も洗われるような気がする・・・。
今回は、東京から伊勢志摩、南紀を廻り大阪を経由して琵琶湖へ行くというルートでロングツーリングに出かけた。旅の友に選んだのはボルボ V90 リチャージプラグインハイブリッド T8 AWD インスクリプションである。
ボルボはすでに全モデルの電動化を完了している。現在、販売しているのはMHEVかPHEVのいずれか。間もなく、これにピュアEVのC40リチャージが加わるが、ピュアEVやPHEVという外部電源でバッテリーを充電できるボルボ車にはリチャージ、すなわち充電可能であるとの「枕言葉」がつくことになった。
PHEVは、国際的にはピュアEVと同等に扱われるケースが多い。その理由は、たとえバッテリー容量が小さくともCO2を排出しないで走行できる能力を持つ点にある。しかも、遠出の際には従来のガソリン車とまったく同じ使い勝手で出かけられる。つまり、普段は環境に配慮しつつも、ときには今回のようなグランドツーリングに連れ出すのにぴったりなモデルがPHEVなのである。
エンジンと電気モーターの協調で味わえるレスポンス
さて、私たちがいま伊勢湾を見下ろしているこの場所は伊勢志摩スカイラインの頂上付近。美しい景色も捨てがたいが、格好のワインディングロードが目の前にあるのに、黙って通り過ぎるわけにはいかない。さっそく、V90のコーナリングを味わってみよう。
まだ降雪の可能性があり、試乗車にはスタッドレスタイヤが装着されていた。サマータイヤ装着時とは少し乗り心地が異なるが、最近のボルボらしく、思いのほかダイナミックな走りが楽しめた。とりわけハンドルの切り始めのレスポンスが軽快なうえ、ロールが適度に抑えられているので安心感が強い。エンジンと電気モーターが織りなすシャープなスロットルレスポンスを堪能しながら、私はタイトなコーナーが続くワインディングロードをリズミカルに駆け抜けていった。
伊勢志摩スカイラインを走り抜けた取材チームは紀伊半島を南下し、那智勝浦にて投宿。本州最南端に近いこの地域は、どこか南国の雰囲気が漂う。できればゆっくりと観光したいところだが、この日の予定は大阪を経由して琵琶湖近くの宿を目指すというもの。あまり寄り道をしていられない。
予定どおり滋賀県の近江八幡で一泊すると、翌朝は琵琶湖湖畔にあるショッピングセンターに立ち寄った。ここには見渡す限りずらりと普通充電用の施設が並んでいて、PHEVやBEVで乗り付けた客は自分のクルマにプラグを接続すると、そのまま巨大なショッピングモールへと歩を進めていく。
おそらく、半日もそこで過ごせば40~50km分の電力が充電でき、うまくいけばまったくエンジンをかけることなく自宅まで辿り着くことだろう。それはPHEVにとって理想的といえる使い方であり、相応しい休日の過ごし方といえる。私たちも充電中は、カフェでお茶を飲みデザートを食し、ショップを訪れるなど充実した時間を過ごした。
滋賀県が観光地としても魅力的であることにいまさらながら気づいた。雄大な琵琶湖はいうまでもないが、近江八幡市の新町周辺は品のいい商家が並ぶ街並みが残っていて往時の雰囲気をいまに蘇らせている。ちなみに、この界隈には近江の地名から連想される「あの」製薬会社の本社も建っている。「あれ、ところで商品名はメンソレータム?それともメンターム?」と悩んでしまった私は、ネットで調べて意外な事実を発見した。まだご存じでない方は、どうか検索してみて欲しい。