新しいパワーユニットが搭載されたボルボXC90に注目
2020年に入ってから3列シートを備えた大型SUVがさまざまな動きを見せている。まずはキャデラック。フルサイズのエスカレードと、ミッドサイズとなるXT5の間を埋めるXT6をリリース。1月1日に国内販売を開始した。続いて3月にはメルセデス・ベンツが新型GLSを発売。さらに翌4月にはフェイスリフトを受けて間もないボルボXC90に新しいパワーユニットが搭載された。
全長が5m規模の大型SUVは、当然のことながら車重も2トンオーバーのヘビー級となる。それをいかにクリーンに効率良く走らせるかが今の時代には問われる。したがって前記した3台のパワートレーンも非常にバラエティに富んだ内容となっているのが特徴だ。
まずボディサイズがもっとも大きいGLSから見ていこう。その前身となった初代GLクラスが登場したのが2006年。メルセデス・ベンツが作るSUVの頂点に位置するクルマとして開発された。
2012年に2代目にバトンを渡したが、2016年のマイナーチェンジを機に車名をGLSへと変更した。そして2020年3月から導入が始まったのが、通算3代目となる新型である。
多くの高級ブランドが参入したことでFセグメントのSUVはもはや珍しくないが、今回同時に試したXT6やXC90などのモデルと比べると、やはり小山のように大きく感じる。ただ、ノーズやテールエンドに曲線が多用されて、全体の面構成がシンプルな近年のメルセデス・デザインのお陰で、歴代の中ではもっとも重々しさや威圧感が少なく感じた。
12.3インチの液晶パネルをメーターとセンターディスプレイに2枚繋げた未来感満点なインパネは、先んじて登場したGLEと強い共通性を感じる。「ハイ!メルセデス」で起動し、各種操作をボイスコマンドで行うインフォテインメントシステムMBUXやADAS系の充実ぶりも、さすがメルセデスの最新作と言えるものである。
メルセデス・ベンツ最新の旗艦SUVとなる3代目GLS
今回試したのはGLS 400d 4マティック。330ps/700Nmの3L直列6気筒ディーゼルターボを搭載する。ほかに489ps/700NmのガソリンV8ツインターボに48Vのマイルドハイブリッド機構を組み合わせたGLS580 4マティックスポーツもある。
OM656と呼ばれるこの直6ディーゼルは、4気筒/6気筒、ガソリン/ディーゼルの垣根を越えて部品を共用するモジュラー化戦略によって作られた最新ユニットで、近年搭載車種を増やしている。2ステージターボの採用により1200rpmという低回転域から最大トルクが得られ、しかも抜群にスムーズで静かと極めて評判が良い。
それはGLSでもまったく変わることはなかった。このエンジン、とにかくディーゼルっぽくないのだ。エンジンをかけた状態で車外に出てみても、カラカラというノック音などはまったく聞こえない。乗り込んでドアを閉めるとアイドリング音すら意識させないほど静かだ。
700Nmのトルクに期待をかけてアクセルペダルを踏み込んでみる。車重が比較的軽いSクラスなどではモリモリっと来るワイルドな加速が味わえたが、車重が2540kgのGLSではそこまでの力強さはない。だからと言って遅いわけではない。強力なトルクと制御が巧みな9Gトロニックとのコンビネーションで、粛々と速度を乗せていく、そんなイメージだ。
加えて回転フィールが滑らかなのも大きな魅力。ディーゼルゆえリミットは4500rpmと高くないが、等間隔爆発による完全バランスエンジンという直列6気筒の長所を生かして、振動が少ない、極めてスムーズな味わいを生んでいる。高圧縮比のディーゼルとしては意外なほどの、サラサラと軽やかな回転フィールである。
足まわりはエアスプリングと電子制御ダンパーを組み合わせたエアマティックサスペンション。AMGラインに組み込まれている21インチタイヤのせいか、ギャップを通過した後に残る若干の余韻や、荒れた路面での当たりの強さを感じることもあったものの、乗り心地も概ねしなやかだった。