メルセデス流のおもてなしが随所に感じられるGLS
さて今回登場するのは、ブランドを代表するフラッグシップ、いわゆるプレミアムSUVである。つまり、3列目シートが用意されている以上、そこも快適なおもてなしの空間にしなければならないのは当然のこととなる。
ところが、あまりに豪華にしすぎると、シートアレンジがしにくくなるという弊害が頭をもたげてくる。ある程度荷物を積めるのが当たり前のように思われているフルサイズのSUVでは、日常的に3列目シートは収納しておき、ラゲッジスペースをより確保するという使われ方をする時間の方が長い場合もあるのだ。というわけで、ここではその辺りを含めて、検証していきたいと思う。
まずメルセデス・ベンツ GLSから見ていく。まず、床が高い。それを考慮してステップが設けられているのは、さすがメルセデスである。これは実に巧みなエスコートを心得た装備だ。3列目シートへのアクセスは、2列目シートの肩に当たる部分にある電動ノブを動かすと、2列目が大きく前に倒れ、乗降用スペースがしっかり開く。またステップに一度足を乗せてから乗り込むので、乗り降りはかなりしやすい。スカートでも気にせず乗り降りできると思う。
3列目シートは、見た目どおりかなり大きい。クッションストロークもしっかりしている。ただし、背もたれは私の体格だと少々面圧が高いようで、常に背中を押されている感じがつきまとう。押されると言っても、マッサージのように快適に押してくれるのではなく身体を預けたいのだが、意に反して押し返される、と言えばよりわかりやすいかもしれない。
さらにヘッドレストが大きく操作感も硬くて、私でも手動で動かすのが大変だったから、一般的な女性にはたぶん無理だろう。
足先は2列目の下に入るので膝が当たることもなく、スペース的な狭さを感じない。ただし、座面がそこそこ急な角度で後ろ側に下がっているので、小柄な方はお腹がくの字に落ち込むような姿勢になり、背中の角度も合わず終始押される。まるで柔らかいベンチに座っているかのように感じられた。また、カップルディスタンスが狭いので、苦手な人とふたり掛けでの長距離移動は、避けたい気持ちになる。
そんなときは大きく開放的なグラスルーフから見える景色で、気分を切り替えたいところだ。ただし体格のいい人ならこれには当てはまらず、至極快適に座れるはずだ。
装備的には、カップホルダー、USB-Cジャック、ライト、エアコン吹き出し口などすべてが揃っていて、3列目から電動で2列目シートが調整できるといった機構も備えており、ライトの明るさやきらびやかさは、メルセデスの風格を感じさせるものだった。
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スカンジナビアンデザインの奥深さに驚いたボルボXC90
続いてはボルボXC90。GLSと比べて床が低く、ステップを装備しないが乗り降りに不便さを感じない。しっかり造られていて重量のある2列目シートをスライドさせ、肩のところのノブを手動で前に倒すと乗降スペースが確保できるのだが、乗り口は思った以上に狭く、決して乗降性が良いとは言えないだろう。
3列目シートの見た目もかなり小さい。座面の長さも、背もたれの横幅も、GLSとはひと目で違いがわかるほどだ。これはもしや修行になってしまうのかと一瞬怯むが、座ってみればクッションストロークが想像以上に確保されており、座面も背もたれも適度なホールド感で、とても座り心地がいいのに正直驚いた。このしっかりサポートしてくれる感じもいいし、ヘッドレストも2列目シートと同様の大きめタイプで、かなり安心感がある。
空間的にも、足先を2列目の下に入れられる上、その2列目シートを適切な位置にセットした場合、なんとGLSよりも足元スペースが広いことに驚愕した。もちろん足下ろし性も悪くないので、私の体格だとロングドライブも楽だろう。カップルディスタンスも真ん中に物入れが鎮座しているので、逆にゆったりと感じられた。
装備的には、ボックス、エアコンの吹き出し口、カップホルダー、ライトが用意される。このボックスのちょうどいい高さの部分がえぐられており、自然に肘が置けるのがまた、空間的余裕を感じさせるのにひと役買っている。スカンジナビアンデザインの奥の深さにまたまた驚く。
開放感の面でGLSの方が上だが、グラスルーフもだいぶ前方にあり、セパレートされ個人的空間が確保できるXC90のシートは、私にはベストマッチだった。