SUV人気はますます高まる一方で、さまざまなタイプのモデルが登場している。そうした中、なんと600psを超える「スーパーSUV」が続々と発売され、世間を賑わせている。今回はドイツプレミアム4社が放つスーパーカー顔負けの驚速のSUVの個性の違いを検証してみた。まずは4車それぞれがどんな特徴を持っているかを解説。意外な共通点やコンセプトの違いなどをここで浮き彫りにしていこう。登場車種はアウディRS Q8/メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC+/BMW X6 Mコンペティション/ポルシェ カイエンターボS Eハイブリッド。(Motor Magazine 2021年8月号より)

足まわりや4WDの違いにより走りの味付けが大きく異なる

その実力を今回、日本で乗り比べるチャンスを得た。駐車場に並ぶ各車は、どれもミニバンよりも幅広で、大径タイヤが足もとを固めて威圧感がある。都内を抜けるのにどれも手に余るように見えるが、覚悟を決めて走り出すと意外なほど周囲を見渡しやすい。

最初に乗ったカイエンは4台中もっとも全高が抑えられノーズが絞り込まれているせいもあるが、何よりも操作感が良い。ポルシェ特有の剛性感の高いステアフィールと精度の高さによって、正確な反応を示してくれる。

これは高速や、ワインディングに入っても変わることなく、一体感のある走りはボディが大きくなっても変わりはない。路面の継ぎ目などでの衝撃緩和はピカイチで、振動も残らない。操作に対しても、外からの入力に対しても、無駄な動きがなく、それが街中での乗りやすさにもつながっている。

対照的なのはX6 Mだ。正確な動きはBMWらしく、常にダイレクト感があって、ドライバーの期待を裏切らない。乗り心地はゴツゴツと硬く、段差乗り越えなどでも収まりは早いものの最初の一撃は大きい。コンペティションという名のとおり、唯一エアサスペンションを用いず、走りに特化させた最速モデルらしさが光る。

画像: BMW X6 Mコンペティション。サスペンションはコンフォートモードでも4車のなかで硬めのセッティングとなる。

BMW X6 Mコンペティション。サスペンションはコンフォートモードでも4車のなかで硬めのセッティングとなる。

RS Q8やGLEはカイエン同様にエアサスペンションを採用していて、乗り味はカイエンの快適さとX6 Mのダイレクトさを両立させている印象だ。街乗りではカドを丸めつつ、高Gでは腰のある収まり感を生み出す、電子制御サスセッティングと言える。

ワインディングに入ると、乗り味はそれぞれ微妙に異なってくる。高速コーナリングではどのモデルもロールをあまり感じさせず、背の高さはまったく気にならない。しかし、日本の狭い道路事情ではサスペンションセッティングばかりではなく、4WDシステムの味付けなどによって、個性の違いを味合わせてくれた。

たとえば、カイエンはモーターとのトータルパワーでクラストップの680psの大出力を旋回加速時にうっかり掛けてしまうとリアタイヤがキュッと鳴き、ステアリングフィールは軽めになるも素直にラインをトレース。旋回初期はリア寄り駆動により、フロントの仕事を邪魔させず、速度上昇に伴い安定方向と向かわせようとする。

同様にX6 Mも旋回中にパワーを掛けていくと、ダイレクトに625psが路面を蹴り上げる。リアを少し沈ませつつ、フロントが同時にコーナーの狙った先に進路をピタリと定めようとする駆動力配分を持つ。常に進路と駆動力がドライバーの意思通りに動いてくれる一方、ハンドルには路面からの反力が大きく、力まずにはいられない。

RS Q8は唯一4輪同サイズのタイヤを履いていることもあって、駆動力は落ち着いている。他車同様に旋回加速をしていっても常にボディが安定方向に終始しているし、直進時のフル加速時も4輪同時に路面を蹴り上げる印象が強い。滑りやすい路面であってもフロントがしっかりと引っ張って行ってくれることから、おそらく発進加速や不整地でのアタックを試みても、4車中もっとも楽に好タイムが出せるはずだ。

GLE 63はどちらかと言えばRS Q8のように高い駆動力を持ち味としていながら、前後駆動力配分を穏やかに進行させ、フル加速時や旋回加速時の姿勢を安定させる。旋回初期にはフロントの自由度を保ちながらも、加速状態に移ると進路を定めていくような、前からの牽引力を生かしたり、旋回中に安定した後はリアから蹴り上げるようなダイレクト感がある。

画像: アウディRS Q8。状況に応じて後輪を最大5度操舵する4輪操舵システムを採用している。

アウディRS Q8。状況に応じて後輪を最大5度操舵する4輪操舵システムを採用している。

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