上級モデルと同様の次世代プラットフォームMQBを採用
フォルクスワーゲンのいわゆる「コンパクトモデル」には現在、ポロ、Tクロス、Tロックの3台がラインナップされている。2021年春にマイナーチェンジしたパサートから始まった新しい「VW」のロゴマークが、この3車にも採用されている。また後部に付けられる車名のエンブレムはリアのセンターにレイアウトされているのもフォルクスワーゲンの新しい法則だ。
少し前まではコンパクトカーは「狭いよね」とか、「長距離ドライブは行けない」というイメージを持つ人がいたが、最新のフォルクスワーゲンのコンパクトカーたちに改めて乗ってみると、そんな我慢は要らないことがわかる。
今回一番コンパクトなのはポロ。TSIハイラインというモデルで3サイズは4060×1750×1450mm、ホイールベースは2550mm、車重1160kgである。5人乗りではあるが、確かに後席に大人の男が3人乗るときつい。
それでもふたりだったら普通に乗れる。横幅は狭いがレッグスペースとヘッドクリアランスはそこそこある。前席に座るのなら、センターコンソールもあるし独立したエリアが確保されるので、まったく窮屈さは感じずに乗ることができる。
小さなボディでもゆとりを確保している秘密は、ティグアンやアルテオンという上級車種にも使われる次世代プラットフォームMQBをこのクラスにも採用しているおかげだ。骨格を一新することによるボディ空間の最適化、サイズを超えた居住性、搭載できる装備や走行安定性なども向上させている。コンパクトカーの空間を有効に使えるようになり、スペース効率が上がったのだ。
小排気量エンジンながら軽量ボディは十二分に軽快
搭載されるエンジンは1L 直列3気筒ガソリンターボ。最高出力70kW(90ps)/5000-5500rpm、最大トルク175Nm/2000-3000rpmを発生する。これを7速DCTを介してフロントタイヤに伝える。車重1160kgだから駆動力に不足はない。スポーティに走りたい時は、ハンドルの裏にあるパドルシフトを使えば、エンジンの美味しい領域を使いこなすことができる。
さらに速さを求めるのなら、Rラインを選べばいい。1.5L TSIエンジンによって150ps/250Nmまでパワーアップする。さらに元気よく走りたいならポロGTIも用意。エンジンは2L 直4ターボとなり200ps/320Nmに達する。車重1290kgという軽さはスポーツ性だけでなく、WLTCモード14.5km/Lと低燃費性能においても優秀だ。
1Lエンジンのポロでも、ボディは軽量なのにやや大きめなハンドルの手応えはしっかりしている。操舵は適度な重さがありダイレクトなフィールが気持ちいい。ロックtoロックは2.5回転で、思い通りの走行ラインを狙える。そのドライビングは十二分にスポーツカー的だ。
ポロの次にコンパクトなのが、Tクロス。3サイズは4115×1760×1580mm、ホイールベースは同じく2550mmとなる。ちょうどポロを背伸びさせたようなフォルムのSUVの車重は1270kg。
ポロに対して130mm車高が高いから、室内スペースも余裕が生まれている。ヘッドクリアランスはとくにゆとりがあり、アップライトな姿勢で座ることができるので前席も後席もポロよりワンランク上のクラスのゆとりを感じる。ポロに比べるとSUVらしい「格上感」だ。同時に内外装の色使いがカラフルで、若々しい。
アルミホイールのデザインなどにも、遊び心が溢れていて楽しい。ハンドリングもまた、ポロと同じようにリニアなレスポンスで応えってくれる。高速道路、市街地、ワインディングロードでも道を選ばず走りやすい。最新の電動パワーステアリングなどだと思うが、手応えがとても自然でいい感じで仕上がっている。
搭載されるエンジンはポロと同じ1L直3ターボだが、最高出力は85kw(116ps)、最大トルク200Nmに向上している。これは約110kgほど車重が重くなったことへの対策かもしれないが、おもしろいことにWLTCモード燃費は16.9km/Lと、ポロ(16.8km/L)よりわずかに良好だ。これは低回転での実質トルクがアップしたために、アクセル開度が小さくて済むからだろうか。