2009年1月、初代アウディR8にV10エンジンを搭載した「5.2FSIクワトロ」が発表された。2006年にデビューしたR8はアウディ初の市販ミッドシップスーパースポーツカーとして大きな注目を集めたが、V8エンジンのみの設定で、V10エンジンの搭載モデルの登場が待たれていた。常に新しい「違う価値」を見せてくれるアウディ、ここでどんな魅力を見せてくれたのか。ここでは国際試乗会からのレポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年4月号より)

もっとパワーを、もっとハイパフォーマンスを!

もっとも、そんなR8にもいまひとつ物足りない面があった。それは、エンジンパフォーマンスである。

確かに4.2L FSIの直噴V8エンジンは、軽量アルミボディとの組み合わせで十二分なパフォーマンスを発揮してくれたし、スポーツカーとしての総合バランスにおいてそれほどの不満はない。エンジンが出しゃばらないという点では、アウディらしいスーパーカーだという思いもある。

その一方で、巷に溢れる500psオーバーモデルの問答無用なパフォーマンスにひとたび触れると、「4.2LぽっちのV8」だと思ってしまうのも事実だった。この丈夫なボディにもっとパワーを、もっとスーパーカーらしい性能を、せめて10発を! 

事実上の兄弟車であるランボルギーニ・ガヤルドの存在が、ある種の足かせになっていたのかも知れない。が、イタリアの猛牛もさらなるビッグパワーV10と直噴エンジンを手に入れた。もちろんアウディテクノロジーだ。そして、性能の階段を上ったガヤルドと4.2FSI V8のR8との間にようやく隙間が生じたのである。

果たして、R8 5.2FSIクワトロ、待望のデビュー。正真正銘のスーパースポーツカーとして、パフォーマンスへの期待は否応にも高まる。

まずは、エクステリア。とくにフロントマスクが印象的だ。ヘッドライトはロー&ハイビーム、ポジションのすべてがLED式となった。開発者によれば対向車にも優しくそれでいて十二分に明るい照射を実現しているという。パッシング能力も凄い、らしい。LED式ポジションライトはV8にも使われていたが、個数が倍の24個(片側)となり、昼間でもスワロフスキーのように輝いている。

シングルフレームグリルは、ハイグロスブラックにメッキシルバーの格子が入った。横バーの数も少ない。その両脇にあるグリルにもエアインテークが開けられ、ウォータークーラー用およびブレーキ冷却用に導かれる。ここもハイグロスブラック塗装で、空気を実際に吸い込む効果を鑑みてフィン数が3本から2本へと改められた。

ドアから後ろでは、R8のアイコンであるサイドブレードが違う。2気筒増えた大出力エンジンのために「もっと空気を」。ドアアウターハンドルのある切れ込みに沿って外側に膨らみ、それに呼応するかのようにサイドアンダーステップも拡大されて、鋭いキャラクターラインが与えられた。

リアセクションは相当に印象が違って見える。ライト下からコーションプレートの背面をつなぐ部分を、ハイグロスブラック色としたためだ。フロントと同様にフィンの数も3本→2本とし、エンドパイプも左右4本出しから左右2本出しへと変更された。

そしてハイライトがガラスショーケースに収まるドライサンプ式V10ユニットだ。事実上、ガヤルド用ユニットのデチューン版と言ってよく、排気量はまったく同じ5204cc。直噴化によって12.5:1という高い圧縮比を得ているのも同じ。組み合わされるのは、6速MTと6速Rトロニック。

開発担当者によれば、V10を積むにあたって大きく変えたのはクーリングシステムくらいで、他の構造はほぼ同じだという。曰く、「ル・マン クワトロを思い出してほしい。元々、V10で検討していたのだから」。

画像: 最高出力525psの5.2L V10エンジン。2003年にショーデビューした「ル・マン クワトロ」を祖とするR8にとって、これが本来の姿とも言えるだろう。

最高出力525psの5.2L V10エンジン。2003年にショーデビューした「ル・マン クワトロ」を祖とするR8にとって、これが本来の姿とも言えるだろう。

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