「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、フォルクスワーゲンのコンセプトカー、XL1だ。

インターフェースにはブランド力が息づいている

画像: 空力を重視してリアタイヤはカバーで覆われている。ドアミラーはなく、ドア前端のカメラで室内のモニターに後方を映し出す。

空力を重視してリアタイヤはカバーで覆われている。ドアミラーはなく、ドア前端のカメラで室内のモニターに後方を映し出す。

「乗降性のために採用」という前上方ヒンジ式のドアを開いて運転席に乗り込む。各スイッチやペダル類がゴルフやポロといった量販モデルですでにおなじみのデザインなのに加え、ダッシュボードそのものも現行量販モデルに準じた素材&デザインなので、この時点で「フォルクスワーゲン車に乗っている」という感覚が強いのはなかなかのブランド力だ。後方の状況を映すモニターが左右ドアトリムの前端に設けられているが、いざ確認しようとするとどうしてもまずは従来のドアミラーが位置するサイドウインドーの外側に目が行ってしまう。ここは慣れが必要となりそうだ。

フル充電時のEV走行距離は35kmという設定。通常発進は電気モーターが担当するが、アクセルを深く踏み込むとこうしたフル充電状態でも即座にエンジンが始動する。「メインの駆動力はモーターが担い、エンジンはブースター的な役割として使う」というのが基本。最高速は走行安定性確保の目的で160km/hに制限されるが、EVモードでは110km/h程度まではモーター走行が可能という。

街中ではたいていのシーンをモーターによる加速で賄えそうだが、郊外路や高速道路上ではエンジンのサポートを必要とする機会も少なくなさそうだ。ちなみに、そんなエンジン始動時はショックこそ気にならないが、背後でエンジン音が高まるので、始動したかどうかはタコメーターに目をやらなくてもしっかり認識できる。

ドーハの街中を20分ほど周回した今回のテストドライブでは、最高100km/h程度までの速度が試せたが、そこでは安定性や乗り心地、ステアリングの正確な効きに剛性感に富んだブレーキフィールなどが、想像以上と感じられた。すなわち、このモデルは単にエコを追求したものではなく、自動車の根源である「走る」という機能の部分もしっかり作り込まれていることが実感できた。

前輪荷重が軽いからステアリングにパワーアシストは備えず、ブレーキにも今のモデルではやはり不可欠と言えるブースターを備えていないというが、現代のクルマが失った、こうしたプレーンな構造が根源的なクルマの魅力をしっかり演じる、ひとつの理由になっていたのかも知れない。そんな点からも、近い将来に向けて量販化の夢が膨らむ魅力あふれるコンセプトカーだった。(編集部註:XL1は2013年にドイツ国内で限定販売されました)

画像: ハイブリッドシステムをシート後方に搭載するためリアウインドーはないが、カメラや超音波ソナーで対応する。

ハイブリッドシステムをシート後方に搭載するためリアウインドーはないが、カメラや超音波ソナーで対応する。

■フォルクスワーゲン XL1 コンセプト 主要諸元

●全長×全幅×全高:3888×1665×1156mm
●ホイールベース:2224mm
●車両重量:795kg
●エンジン種類:直2 DOHCディーゼルターボ
●排気量:800cc
●最高出力:20kW<27ps>
●最大トルク:100Nm<12.2kgm>
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:ミッドシップRWD
●NEDC燃費:111.1km/L
●最高速度:160km/h(リミッター作動)
●EVモード航続距離:35km
●エンジン+モーターでの航続距離:約550km

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