スイングアクスルは、独・フォルクスワーゲン ビートルをはじめとする乗用車で採用されたサスペンション形式だ。日本でもいすゞ ベレットや日野 コンテッサなどの乗用車にも採用されていた、初期の独立式サスペンションとなる。これはどんな機構だったのか、解説していこう。

スイングアクスルは、独立式だがキャンバー変化が大きい

スイングアクスルとは独立式サスペンションの一種で、主に駆動輪に用いられることが多かった形式だ。デフからタイヤへ駆動力を伝えるドライブシャフト(車軸)が、サスペンションアームの一部も担うというシンプルな構造が特徴となっている。

フォルクスワーゲン ビートルやポルシェ 356はこのサスペンション形式を採用しており、初期の高性能サスペンションといえた。昭和の国産車としては、日野 コンテッサ1300や、変則的な形式となるがいすゞ ベレット1600GTが採用している。

スイングアクスルサスペンションの構造

画像: デフと車軸(ドライブシャフト)の間に結合点があるが、車軸と車輪側は固定式となっているのが特徴。

デフと車軸(ドライブシャフト)の間に結合点があるが、車軸と車輪側は固定式となっているのが特徴。

構造を簡単に解説しよう。デフからの駆動力を伝えるドライブシャフトはアクスルチューブの中を通って車輪側につながっている。デフの付け根のジョイントは可動式だが、車輪側は固定式となっている。左右輪のサスペンションの動きは連動していないので独立懸架だが、車輪側に可動式ジョイントがないためにドライブシャフトのジョイントを支点としてタイヤが上下に動く。動きが大きくなると、キャンバー角の変動が大きくなるのがデメリットとなる。

画像: スイングアクスルを採用した代表的な車種は元祖ビートル。シンプルな機構のために、コストも安く抑えられた。

スイングアクスルを採用した代表的な車種は元祖ビートル。シンプルな機構のために、コストも安く抑えられた。

独立懸架なので、路面への追従性に大きく影響を与えるバネ下重量が軽くなり、コーナリング時の接地性に優れる。ただ、ブレーキング時にフロントがダイブしたときにリアがリフトし、ポジティブキャンバー(逆ハの字)になりトレッドが狭くなる。さらにタイヤと路面の接地面も少なくなることから不安定になりがちだ。

ハンドルを大きく切り返すことの多いスラローム走行のようなときにも、キャンバー角の変化が大きくなって同様に挙動が不安定になる。そのため、本格的な独立懸架が普及すると姿を消した。

画像: 1969年に登場したホンダ1300は、非駆動輪のリアにクロスビーム式スイングアクスルを採用。それぞれのビームを反対側のストラットに届くほど長くして、キャンバー変化を抑えていた。

1969年に登場したホンダ1300は、非駆動輪のリアにクロスビーム式スイングアクスルを採用。それぞれのビームを反対側のストラットに届くほど長くして、キャンバー変化を抑えていた。

ちなみに、このキャンバー変化を減らすためにスイングアームを長くして対策した例もあった。1969年に登場したホンダ1300のようにリア(非駆動輪)に用いて、トレッドに匹敵する長さを持つスイングアームをX状に配置しキャンバー変化を抑えたのだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

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