「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、キャデラック CTSクーペだ。

キャデラック CTS-Vクーペ(2011年)

大排気量エンジンを搭載したアメリカン スペシャリティ、いわゆる「マッスルカー」。アメリカ車=大排気量=環境破壊、などと思われがちな昨今だが、意外や効率を考えれば見直されるべき存在でもある。

キャデラックのミッドサイズ モデル「CTS」は初代こそセダンのみだったのだが、2代目からはクーペ(とワゴン)も設定され、昨年(編集部註:2010年)秋にようやくクーペの日本導入が始まった。しかも、標準モデルのCTSクーペだけでなく、ハイパワーバージョンのCTS-Vクーペも同時にやって来た。今回、この2台に短時間だが試乗することができた。まずは、CTS-V クーペから。

画像: 6.2LのV8にスーパーチャージャーも装着。キャデラック史上、最強最速のパワーユニットだ。

6.2LのV8にスーパーチャージャーも装着。キャデラック史上、最強最速のパワーユニットだ。

その佇まいは、遠くから見ても、すでにただならぬ異彩を放っていた。まずフロントマスクは、バンパーを挟んで上下に空いたグリルに張り巡らされたメッシュのメッキがけっこう威圧的。そしてボンネットフードの盛り上がりからは、そこに収まるものの存在を連想させてくる。

そこでボンネットフードを上げてみれば、スーパーチャージャー付きの6.2L V8 DOHCエンジンが黒光りしていた。これがフルパワーを発生するとき、発せられる熱がメッシュグリルからどんどん放出されていくというわけだ。考えただけで、もうアメリカン マッスルの世界である。

ドアを開けて乗り込むと、そこはCTS-V専用のコクピットだ。いつもの優美ながら骨太なキャデラックのインテリアは、真っ赤な針が振り切れそうなメーター類、「V」のエンブレムが埋められたステアリングホイール、本革巻きのATシフトレバー、そしてRECARO製のパワーシートで強化されている。ここに収まるだけで、モリモリと昂揚感が押し寄せてくるほどだ。

恐る恐るエンジンをかけると、ブオオンと猛々しい雄叫びが上がる。だが普通に走っている限りは紳士的で、扱いは特に難しいことはない。これなら買い物の足にも使えそうだな、なんて思ったのも束の間、50km/hくらいまで加速しようと少しアクセルを踏んだ途端、エッ!と思うほどのトルクに押された。

そしてそのまま自動車専用道路に入ると、合流前のカーブからものすごい剛性感で路面を蹴飛ばし、直線に入った瞬間に爆発的パワーが生まれていた。これがマグネティックライドと564ps/747Nmの世界! アクセルひと踏みで、まさにジキルからハイドへ豹変するキャデラック CTS-Vクーペ。この加速は、病みつきになってしまうかもしれない。

画像: このリアビューを見せつけられた直後には、あっという間に前方へ消え去って行ってしまいそうだ。

このリアビューを見せつけられた直後には、あっという間に前方へ消え去って行ってしまいそうだ。

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