エモーションを喚起するオープンモデル
昨年(2008年)秋から世界規模で発生した経済恐慌で、各国の自動車市場は急激な落ち込みを見せ、復調の予想がつかない状況に陥っている。ところが、ドイツでは徐々にではあるが、何とか回復の兆しを見せ始めている。2月の新車登録台数が昨年の21.5%増になったのである。もっともこれはおよそ30万円の廃車奨励金によって、価格の安い小型車が昨年同期の2.5倍も売れたのが主な原因だ。
しかし、この国には自動車ビジネスが立ち直ることができる事情がある。それはインフラなどもあるが、実はもっとも大事なのはエモーションという要素である。つまり排出ガス規制とか不景気とか、いろいろと大変なことはあるが、結局のところ自動車が好きだから買うのである。
そして、そのエモーションを喚起するのが、素晴らしいデザイン、ハイテクであり、クルマの種類で言えばスポーツカーやオープンモデルなのである。蛇足ながら人間輸送機と定義されるミニバンでは決してない。
とくにオープンモデル、すなわちロードスターとカブリオレは、リセッションにもかかわらず、毎年、微増を続けており、ドイツ国内では不況の直前は前年度比7%増であった。もちろん不況の影響で2008年こそ勢いが落ちたものの、2011年までには2008年の15万台から16万台へと6%増加すると見られている。
それゆえにドイツをはじめとする欧州メーカーは、最大のフォルクスワーゲンからボルボ、そしてサーブまでが、必ずオープンモデルをカタログに載せている。
反対に日本メーカーは、全ブランドを合わせてもわずか5モデル、韓国メーカーに至っては1台もない。ちなみにドイツで売られている5万ユーロ以下のオープンモデルは35車種もある。
欧州メーカーの中でも、とくにドイツのプレミアムブランドは凄い。今回紹介するBMWなどは、1シリーズ、3シリーズ、6シリーズ、そしてZ4と、4モデルもディーラーにオープンモデルを並べている。MINIも含めれば、それだけで日本の全メーカーに匹敵する。中でもZ4は2シーターロードスターということもあって、BMWブランドの象徴ともなっている。