リアにひとつのモーターを搭載した後輪駆動モデルのタイカン。その実力はかなり高い。そしてこのモデルの登場でさらに、タイカンシリーズの魅力の幅が広がったと言える。(Motor Magazine2021年10月号より)
ポルシェ タイカンのラインナップ、そして車両価格を考える
タイカンのベースグレードが誕生したことで、ポルシェ初の「BEVのヒエラルキー」が完成した。私はポルシェのビジネスとクルマ選びを語るうえで、プロダクトのヒエラルキーが重要な役割を果たしていると常々考えていた。
たとえば911のベースモデルであるカレラは1429万円だが、その4輪駆動版であるカレラ4には106万円の価格差を埋めるのに十分以上のバリューがあって、予算に余裕があれば当然のようにカレラ4を選びたくなる。
なるほど、「素のカレラ」にはシンプルなモデルゆえの清々しさも備わるが、パフォーマンス重視で選べば「気づいたらターボ(もしくはGT3)が欲しくなっていた」なんてことが起きても不思議ではない。これがポルシェならではのヒエラルキーの妙味であり、興味深いところだともいえる。
では、ポルシェ初のBEVであるタイカンの場合はどうなのか? タイカンのトップグレードはターボSで、これにターボ、4S、そして今回紹介する「素のタイカン」と続く。わかりやすくするため、これをタイカンベースと呼ばせていただこう。価格は上から順番に2468万円、2037万円、1462万円、1203万円で、タイカンベースの価格は、ターボSのおよそ半分に相当する。
2台の違いは、バッテリー容量とパフォーマンスの差にほぼ集約できる。ちなみにターボSと「ベース」のバッテリー容量は93.4kWhと79.2kWh。最高出力と最大トルクはターボSが761ps(ローンチコントロール時)/1050Nmで、ベースが326ps/345Nmとなる。これだけを見ても、価格相応の差があることは理解していただけるだろう。