リアにひとつのモーターを搭載した後輪駆動モデルのタイカン。その実力はかなり高い。そしてこのモデルの登場でさらに、タイカンシリーズの魅力の幅が広がったと言える。(Motor Magazine2021年10月号より)

後輪駆動のタイカンはマイベストモデルである

ただし、BEVならではの事情が満充電で走行できる航続距離で、ターボSが400kmなのに対して、ベースは406〜463km(パフォーマスバッテリープラス)と発表されている。つまり、バッテリー容量はターボSの方が大きいが、タイカンベースの方が最長の航続距離が長くなっている。

もちろんエンジン車でも高性能な方は燃費が悪い場合も多く、上位モデルは必然的に航続距離が短くなりがち。けれど、BEVでは航続距離の長さも重要な性能のひとつと見なされるので、ターボSとベースの関係は「ちょっと微妙」と言えないこともない。

さらに言えば、タイカンのベースと4Sのバッテリーは前述のとおりターボ系より小さい79.2kWhだが、これは90万円強のオプション「パフォーマンスバッテリープラス」を装着することで解消できる。しかも、このオプションをオーダーするとモーターの最高出力が20%ほど高まるという恩恵も付いてくる。

ただし、オプションを選ぶと車重が80kg重くなる関係で、航続距離の伸びは50kmほどに留まる。つまり、価格とパフォーマンスの向上代(こうじょうしろ)は、エンジン車とは比べものにならないほど微妙で複雑なのがタイカンのヒエラルキーなのである。

画像: インテリアでタイカンベースと2モーターのタイカンの違いはほとんど見られない。当然、充実している安全運転支援システムにも差はつけられていない。

インテリアでタイカンベースと2モーターのタイカンの違いはほとんど見られない。当然、充実している安全運転支援システムにも差はつけられていない。

それでは、今回試乗したタイカンベース(パフォーマンスバッテリープラスのオプション装着車)がどうだったかといえば、これが思いのほか良かった。それどころか、このベースこそ「マイベストタイカン」といっても過言ではないほど。なにがどう良かったのか、ここからジックリと解説させていただこう。

まずはドライブトレーンの完成度がすこぶるいい。タイカンベースは、タイカンシリーズの中でモーターをリアに1基しか搭載していない唯一のモデル。つまり、4WDとなる他のタイカンとは異なり、後輪駆動(RWD)なのだ。

おかげで最高出力は380ps(パフォーマンスバッテリープラス装着車)と限られるが、最新の911カレラだって最高出力は385ps。もっとも、あちらは車重が1530kgと500kg近くも軽いけれど、低速域から力強いトルクを生み出してくれる電気モーターのおかげでタイカンベースの出足は実に軽快。いや、1050Nmでやや怖いくらいのターボSに比べれば、加速感は公道で使い切れる範囲をやや上回る程度の、とてもほど良い速さなのだ。

しかも、加減速の反応が非常に滑らかで心地いい。私の記憶では、ターボSなどの高性能なタイカンは、加速から減速へ、もしくは減速から加速へのように、加速度がゼロを横切るところで微妙なギクシャク感があったけれど、ベースはそれが皆無。このゼロクロス時のパワー制御はBEVでもっとも難しい課題のひとつだそうだが、タイカンベースはこれを見事にクリアしていたのである。

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