2009年、デトロイトショーでW212型(4代目)メルセデス・ベンツ Eクラスがデビュー。新たに採用された運転支援システムをはじめとした最新のテクノロジーや新しいスタイリングが大きな注目を集めた。ここでは日本市場登場を前に、スペイン・マドリッドで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年6月号より)

原点回帰と言っていい走りと優れた安全性

もう1台、マークしておかなければならないのがE250CGIブルーエフィシェンシーである。何と、そのエンジンは先代モデルのV型6気筒2.5L自然吸気から、直列4気筒1.8L直噴ターボへと刷新。最高出力204ps、最大トルク310Nmというスペックは、現行E250に対して最高出力は同じで、最大トルクは実に60Nm増しにもなる。しかも当然、燃費は大幅に向上している。

そんな特性だけに、走りに不満はない。下から上まで全域でフラットなトルクは、大型化されたボディにも十分なパフォーマンスをもたらす。エンジンフィールにとくに味わいはないが、ターボだけに音は静かだし、そもそも回転をさほど上下させなくても良く走るだけに、物足りなさはなかった。むしろ望みはトランスミッションを5速ATではなく7Gトロニックにしてほしかったということだが、これとて実用上の問題があるわけではない。

フィーリングで言えば、ノーズの軽さが活きるハンドリングの軽快感というポジティブな要素の方が際立って感じられた。ノーマルサスペンションは乗り心地だって速度域問わず上々。優れた実用車としてメルセデスを見た場合、これは最強の1台となり得る可能性を十分秘めていると言えるだろう。

画像: スタイリングはエッジが強調されたスポーティなもの。アイデンティティと言える丸型ツインヘッドランプが角形に改められた。

スタイリングはエッジが強調されたスポーティなもの。アイデンティティと言える丸型ツインヘッドランプが角形に改められた。

駆け足で見てきたが、こうした原点回帰とも言うべき走りっぷりと優れた安全性能の磨き上げによって、新型Eクラスはまさにメルセデス・ベンツ特有の価値を再認識させるクルマに仕上がっている。それはすなわち、A点からB点までの移動を、疲れを最小限に、快適にこなすための最良の1台という意味である。

確かに目を見張るような新技術や飛び道具も取り敢えずは見当たらないが、本質を磨き上げることで得たその価値は、他では決して得られないものだ。

冒頭に第一印象は良くはなかったと書いたが、考えてみればEクラスは、いつもそういうクルマだった。ハッと目を惹くことはないが、付き合ううちに良き道具としてずっと寄り添ってほしい存在となる。新型Eクラスには、そんなEクラスらしさ、メルセデス・ベンツらしさが濃厚なのだ。

ちなみに日本仕様は、まずはV型8気筒とV型6気筒の3エンジンで展開される予定だ。そのうちE350はCGIではなく現行のエンジンが使われる。E250CGIブルーエフィシェンシーも、遅れての導入となるようだ。個人的には、これら新エンジンこそが、新しいEクラスには相応しいと感じている。早期の導入を期待したい。(文:島下泰久)

メルセデス・ベンツ E500 主要諸元

●全長×全幅×全高:4868×1854×1447mm
●ホイールベース:2874mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5461cc
●最高出力:285kW(388ps)/6000rpm
●最大トルク:530Nm/2800-4800rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:9.2km/L
●タイヤサイズ:245/45R17
●最高速度:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:5.3秒
※EU準拠

メルセデス・ベンツ E250CGIブルーエフィシェンシー 主要諸元

●全長×全幅×全高:4868×1854×1465mm
●ホイールベース:2874mm
●車両重量:1650kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1796cc
●最高出力:150kW(204ps)/5500rpm
●最大トルク:310Nm/2000-4300rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:13.7km/L
●タイヤサイズ:225/55R16
●最高速度:241km/h
●0→100km/h加速:7.7秒
※EU準拠

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