内燃機関の長い歴史の中にあって、乗用車用としては圧倒的少数派であったV型10気筒エンジン。
野趣にあふれるも複雑なハーモニーが、ドライバーを陶酔の極みへと導く。(Motor Magazine2021年11月号より)

自然吸気ならではのリニアな特性を楽しめるのは今のうち

610psものパワーを2本のリアタイヤだけで路面に伝えると聞けば、十分なトラクションが得られるかどうか心配になるかもしれないが、ウラカンEVO RWDはエンジンを低い位置に搭載した低重心レイアウトが効を奏しているのか、まったくトラクション不足を感じさせない。むしろハンドリングは極めて安定していて、スタビリティも高い。

もっとも、サーキットでタイヤのグリップ限界近くまで攻め込めば、スロットルペダルのオン/オフによってノーズの向きが変わり、走行ラインを微妙に修正できる。これは同じウラカンでもAWDモデルでは引き出しにくい特性。この、十分なスタビリティを確保しながらも、スロットル操作で挙動を調整できる点が、EVOに生まれ変わったウラカンRWDモデルの特徴といえるだろう。

そうした走りをワインディングロードで楽しんでいる時、改めて感服させられるのがV10 NAエンジンの自然なレスポンスである。最新のターボエンジンのように、ドンとスロットルペダルを踏み込んだときに低回転域から急激にトルクがわき上がることはないけれど、そのときどきの回転数や車速、選択したギアに応じて、いつでも素直に反応してくれるのが自然吸気エンジンの最大の武器。この予測しやすく、リニアリティの高いパワーとレスポンスが、自然吸気エンジンのなによりの魅力だと私は考える。

そんなウラカンも、あと2、3年でプラグインハイブリッドを搭載し、V8もしくはV6エンジンに積み替えられる見通し。そちらはそちらで楽しみだが、自然吸気のナチュラルな反応を堪能したいなら、いまが最後のチャンスであることは間違いない。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

画像: ウラカンEVO RWDスパイダーのコックピット。フォージドコンポジットカーボンほか、内装にはアド・ペルソナムに基づく各種のトリムが配されている。

ウラカンEVO RWDスパイダーのコックピット。フォージドコンポジットカーボンほか、内装にはアド・ペルソナムに基づく各種のトリムが配されている。

ランボルギーニ ウラカンEVO RWDスパイダー主要諸元

●全長×全幅×全高:4520×1933×1180mm
●ホイールベース:2620mm
●車両重量:1509kg(EU準拠)
●エンジン:V10DOHC
●総排気量:5204cc
●最高出力:449kW(610ps)/8000rpm
●最大トルク:560Nm/6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・83L
●WLTCモード燃費:7.2km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:前245/35ZR19、後305/35ZR19
●車両価格(税込):2919万3600円~

アウディR8

画像: 静粛性に優れ、ロングツアラー的なR8。写真はクーペV10パフォーマンス5.2FSIクワトロSトロニック。

静粛性に優れ、ロングツアラー的なR8。写真はクーペV10パフォーマンス5.2FSIクワトロSトロニック。

同じ魂を搭載する兄弟車

ウラカンと事実上の兄弟モデルでもあるアウディR8も5.2LのV10を搭載している。2台のエンジンはキャラクターがよく似ているが、トップエンドの刺激度でいえばウラカンがやはり一枚上手だ。一方、R8は静粛性に優れ、乗り心地も快適なのでロングツアラー的とも言える。現在、発売中のR8は620psのV10エンジンを積んだ4WDモデルのみ。スタイリングが大人しく、視界が良好でより乗用車的な点もR8の特色と言っていいだろう。

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