いまや数社しか生産していない直列6気筒ガソリンエンジン。しかも、そのほとんどが電動デバイス付きである。さらに国内仕様で純ガソリンエンジンとなれば、実はシルキー6と呼ばれるBMWの一択なのだ。(Motor Magazine2021年11月号より)

踏み込んだ時の絶妙な反応「シルキー6」は健在だった

3シリーズクーペを4シリーズと呼ぶようになって二代目。最大のニュースは巨大なキドニーグリルだったが、今となっては見慣れた気もする。否、実物は写真で感じたほど「巨大」ではなかった。国内外のプレミアムブランドに比べて大きいとは必ずしも言えず、キドニーグリルとしては大きいというだけのことだった。しかもフェイスの天地に及ぶグリルデザインは立派に先祖返りでもあったから、筆者などはかえって好ましいと思ったものだ。

これまでのBMWクーペスタイルの美意識はあくまでもセダン派生だった。けれども先代で3シリーズという名前と決別した結果、デザイン的に吹っ切れたのだろう。現行モデルはもはやミニ8シリーズというべきダイナミックなスタイリングとなり、その走りもまたグランツーリスモ性に磨きをかけたものとなった。

コンバーチブルにおける最大のニュースはソフトトップが復活したこと。とはいっても実際に触っていただくとわかるのだけれども、見た目に「ソフト」というだけでルーフはとても硬い。走行中に「はためく」などということは100%ない。それゆえオープンスタイルにはまだリトラクタブルハードトップと同様の「収まりの悪さ」がある。ソフトトップに特有の潔さには若干、欠けてしまう。もっとも質感の異なる2トーンデザインは十分にエレガントだから、収まりの悪さを補って余りあるといっていい。

Mハイパフォーマンスを除いて最強グレードとなるM440iコンバーチブルの走りは、期待どおり、クーペとほとんど変わらぬダイナミック性能をキープし、その上で爽快なオープンエアクルージングを提供するというものだった。なにより本稿の主題でもあるストレート6がやはりいい。右足を踏み込んだ時の抜けの心地良さ、とでも言おうか。

画像: 最先端デジタル技術を満載したコクピット。最新のインフォテインメントシステム&サービスも標準採用する。

最先端デジタル技術を満載したコクピット。最新のインフォテインメントシステム&サービスも標準採用する。

テストは一般道と同じ舗装路面のクローズドコースで行ったので、久しぶりに思う存分、高回転域まで回したが、3000rpmから4000rpmあたりで右足裏に感じる力強さもさることながら、力を出し切ったかと思う6000rpm以上からレブリミットあたりで生じる超精密なメカニカルノイズが乗り手をいたく刺激する。

当然のことながらその状態を永遠に楽しむわけにはいかず、コーナーが迫り来るたびに右足を踏み替えて一からやり直すわけだが、そのプロセスが何度繰り返しても楽しい。もちろん、パワートレーンの高いレスポンス性に適応する制動フィールとハンドリング性能があってこその話ではある。

加えてフルオープンにした時にこだまして室内へと降り注ぐエキゾーストノートの、ボリュームをほど良く抑えつつもしっかりとした圧を感じさせる官能性の高さといったら! クローズドコースをずっと回っていてもまるで飽きないほど、クルマ運転好きにはたまらないサウンドである。

ああ、これがストレート6だ。自然吸気ではないけれども、それはもはや高望みにすぎる。ターボ化は高性能と燃費の両立を願い続けたユーザーへの、そして社会からの要請に対するメーカーの生真面目な回答でしかない。

高回転域まで回した時、そんなことはどうでもいいと思えてくる。シルキー6は健在だ。(文:西川 淳/写真:永元秀和)

BMW M440i xDriveカブリオレ主要諸元

●全長×全幅×全高:4775×1850×1395mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1880kg
●エンジン:直6 DOHCターボ
●総排気量:2997cc
●最高出力:285kW(387ps)/5800rpm
●最大トルク:500Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・59L
●WLTCモード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:255/35R19
●車両価格(税込):1089万円

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