2021年から遡ること41年、自社開発のセンターデフ式フルタイム4WDを搭載する初代クワトロを発売したアウディ。以後、それはアウディを象徴するテクノロジーであり続け、プレミアムブランドとしての先進性/独自性を決定してきた。連綿と続くクワトロの価値を、先ごろ開催された「quattro MOMENT EXPERIENCE」から改めて読み解く。(Motor Magazine 2021年12月号より)

歴代を代表するクワトロのシステムを振り返ってみた

話を元に戻そう。イベント当日、久しぶりに対面したアウディクワトロは「ウア・クワトロ」と呼ばれる初代モデル。クワトロシステムは発売当初はベベルギア式センターデフとふたつのデフロックを備えたシステムであった。しかし、年々改良が行われ、1982年には両方、あるいはリアのロッキングシステムはマニュアルでオン/オフが可能になっていた。また1986年にはトルセン式センターデフが採用され、ウインタードライブでの性能向上が図られた。

ちなみに1984年にはグループBのホモロゲーション取得を目的にホイールベースを320mmも 短縮したスポーツクワトロを発売、200台のホモロゲーションをクリアするためにS1、その進化版のE2などバリエーションが加わった。

この初代クワトロの後継車として開発されたのが1990年に登場したS2である。搭載されたエンジンも2.2Lの5気筒ターボで、最高出力は220psだった。そしてこのモデルから現在のようにクーペのみならず、セダンそしてアバント(ワゴン)とクワトロシステムがすべてのボディバリエーションに搭載されるようになった。

一方、横置きエンジン搭載モデルのA3やTTのクワトロ仕様に、エレクトロハイドロリックマルチプレート多板クラッチからなる通称ハルデックスカップリングが採用されている。このように「クワトロ」と言ってもさまざまなシステムを適材適所で採用しているのである。

画像: アウディTT RS スパイダー。HMPCにスポーツデファレンシャルを組み合わせた現行TTのRS。このクワトロシステムは新型RS3にも発展継承。

アウディTT RS スパイダー。HMPCにスポーツデファレンシャルを組み合わせた現行TTのRS。このクワトロシステムは新型RS3にも発展継承。

仕組みは進化を遂げながら思想は誕生時と変わらない

新型RS3の試乗も交えながら歴代のクワトロシステム搭載車の試乗を終え、最後に乗ったのが最新のスポーツBEVであるeトロンGTだ。しかも走ったのはモンテカルロラリーのスペシャルステージとして有名なチュリニ峠だ。

全長4.99m、そして全幅は1.96m、さらに空車重量2.35トンの巨体を前にして最初は「ぜったいに無理!」と思った。

しかし、走り出すやそのサイズやウエイトを感じさせない走りを見せたのである。それを可能にしているのは低い重心高、チャンバーエアサスペンションによるロールコントロール、正確無比かつゴーカートフィールを持ったシャープなステアリングシステム、そして0から100%まで臨機応変に前後輪にトルクを配分するエレクトリッククワトロシステムだ。もちろん、BEVならではのピックアップも素晴らしかった。

画像: 新旧クワトロを前に語り合うブロンクビストとアウディ・スポーツのフォーミュラEドライバー、ディ・グラッシ(右)。「eトロン GTには初代クワトロのDNAが宿っている」。(左がアウディ スポーツクワトロS1[1985]、右がアウディRS eトロンGT[2021])

新旧クワトロを前に語り合うブロンクビストとアウディ・スポーツのフォーミュラEドライバー、ディ・グラッシ(右)。「eトロン GTには初代クワトロのDNAが宿っている」。(左がアウディ スポーツクワトロS1[1985]、右がアウディRS eトロンGT[2021])

クワトロシステムの変遷を辿った今回のイベント、その誕生から現在まで驚くほどの進化を改めて確認できた。しかも単なる進化に止まらず、環境への配慮など細部にまで配慮が行き届いている。

一方、変わらないものは彼らの4WDシステムへの考え方だ。AからBまでを、安全に、快適にそして運転する楽しみを提供するダイナミック性と環境への配慮を配りながら、高い品質と信頼性を持って提供することである。その信念こそが「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」なのである。

最後に、またまた個人的なことを述べさせていただくと、我が家のあるアメリカのオハイオ州は四季の変化が激しく、厳寒と積雪の冬、そして猛暑と豪雨の夏に悩まされるが、年間を通じて確かな伴侶になってくれるのはアウディ A5の2.0クワトロであることを蛇足ながら付け加えておく。(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス、アウディAG)

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