初代ゴルフGTI「既存のヒエラルキーを打ち破る痛快な高性能」
1974年にデビューを飾った初代ゴルフは、伝説的な大衆車「ビートル」の後継車として、FF横置きエンジンパッケージングの新時代のベーシックカーとして登場、たちまち大ヒット作となる。
そんな中、フォルクスワーゲンの一部のエンジニアが秘密裏に「ゴルフの特別なスポーツ仕様」を計画。まだ本社から正式な承認を得ていない中、まずは100psを発生する高性能キャブレター仕様のプロトタイプを開発する。
開発エンジニアの有志がこれを取締役会に提案すると、スポーツイメージを求めていた本社はこの企画に正式なGOサインを出している。1975年3月、この時、それまで内密に進められてきた計画は、EA195の型式を得て公式な開発プロジェクトとなった。
こうして、1975年9月、フランクフルトモーターショーでコンセプトカーとしてワールドデビューを果たした「ゴルフのスポーツ仕様EA195」は大きな反響を呼び、その開発は一気に加速することになる。そして、1976年6月に「ゴルフGTI」として発売される。
ラジエーターグリルの赤いアクセント、タータンチェック柄のスポーツシート、ゴルフボール型のシフトノブ、スポーツステアリングホイールなどベース車と差別化された印象的な装備と、最高速度182km/hの性能は、まさに衝撃的だった。
しかも車両価格はわずか1万3850ドイツマルク。全長わずか3.7mの小さなボディからは想像できない速さは、高価なスポーツカーや大型サルーンを頂点とするヒエラルキーを打ち破る痛快な存在として、瞬く間に多くのファンを獲得した。
生産台数は当初5000台を計画していたが予想を大きく上回る人気を獲得し、結局、累計46万1690台もの生産台数を記録することになる。
初代ゴルフGTIは日本にも並行輸入されてファンから熱狂的な支持を受けたが、残念ながら正規輸入されることはなかった。
ちなみに1983年には、特別仕様車のゴルフGTI ピレリも誕生している。
●初代ゴルフ GTI
エンジン:直列4気筒
エンジン排気量:1588-1781cc
最高出力:110-112ps
最高速:182-187km/h