最先端のハイブリッドと洗練されたガソリンエンジンを、乗り比べてみた
パワートレーンに目を向けるなら、話題の中心はやはり最新世代のトヨタ シリーズパラレルハイブリッドシステムになる。現行プリウスがいわゆる第4世代、アクアはちょっと進化した第4.5世代で、新型ノア/ヴォクシーは第5世代システムの先駆けとなった。
代替わりを謳うだけあってさまざまな大幅改良が施されているけれど、とくにコンポーネンツの集約や改良された構造などによる小型軽量化と高効率化には、目をみはるものがある。
わかりやすいところではモーターのポテンシャルが高まり、役割分担の幅が広がったことによる恩恵が大きい。スタート時、EVレンジでの力強い加速感はたいしたものだ。しかもアクセルワークの匙加減さえ心がけておけば、メーター目視20km/h過ぎまでデフォルト状態でモーター走行を維持できる。
もうひとつ、新世代のハイブリッドシステムがとても静かだ。もともとモーター駆動は静かなものだけれど、エンジンとはまた違う部分で、実は電気モーターはかなり饒舌だったりする。それはおおむね電気ノイズによるもので「なんとなく聞こえるキーンという音」で体感される。
新型ノア/ヴォクシーのハイブリッドシステムはそのノイズの周波数を高めに持っていくことで、人間の耳には聴こえないものに変え、耳障りなノイズを実質的に消し去ることに成功した。
ガソリンエンジンがスタートする時の音や振動も、うまく丸められている感じがある。これまでのハイブリッドではエンジン始動時に急に回転数が高まってしまいがちだったが、新世代ユニットはそうした「無駄」もしっかり解消されているようだ。
回生ブレーキのタッチも自然でわかりやすい。減速という面については、下り坂などでドライバーのブレーキ操作を微妙にアシストする新機能が盛り込まれている。ドライバーがブレーキを踏む頻度が少なめになる、つまり加速だけでなく減速時にもスムーズな動きをサポートしてくれるわけだ。
一方のガソリンユニットも、素直さという点ではハイブリッドシステムにけっしてひけを取ってはいない。思い切りパワフルでこそないけれど、吹きあがりに澱みが少なく、思い通りに加速感をコントロールすることが可能だ。回転が上がっていった時の伸びもよさそうなので、高速道路でのパフォーマンスにも期待したいところだ。
街乗りレベルなら、ハイブリッドもガソリンも走行時の静粛性が高いことが実感できるが、そのポイントは遮音・吸音処理におけるさまざまな創意工夫だという。たとえばエンジンルームからの音の侵入を抑制するために、隔壁に開けられた「穴」を最小限としている、とのこと。
価格転嫁が非常に難しい「目に見えない努力」だが、新型ノア/ヴォクシーの価値ある進化を支える重要なアドバンテージであることは、間違いない。