トヨタ車やレクサス車を中心に、純正で「パフォーマンスダンパー」と呼ばれるパーツが採用されていることがある。またアフターパーツメーカーからも発売されている。名称や装着によって操縦安定性の向上、乗り心地の向上が図れると聞くとサスペンション系のパーツかと思いきや、ポイントはボディのチューニングだという。今回はそのパフォーマンスダンパーについて解説する。

パフォーマンスダンパーはボディのたわみを減衰して走行性能を上げる

画像: 前後にパフォーマンスダンパーを装着して2021年に発売されたレクサスNX350 Fスポーツ。

前後にパフォーマンスダンパーを装着して2021年に発売されたレクサスNX350 Fスポーツ。

車体(ボディ)は通常はなるべく剛性を高める方向で設計・開発される。ボディ剛性が高いとか低いとかは、クルマの走行性能に興味のある人ではよくある話題だ。ボディ剛性を高めれば、設計どおりにサスペンションを動かせるので走行性能は上がり、乗り心地も良くなる。それでもボディは基本的に鉄板を張り合わせて作られるので、いくら剛性を上げても外部からの入力によってボディは微少にたわみ、その後もとに戻ろうとする。つまり、基本的に車体は弾性体なわけだ。

パフォーマンスダンパーは、弾性体である車体の非可動部に装着することで、ボディの変形による影響を減衰できるパーツと言える。この役割を例えれば、ボディをサスペンションのスプリング、パフォーマンスダンパーをショックアブソーバーと考えるのがいいだろう。

画像: 2021年レクサスNX Fスポーツの後端に装着されたパフォーマンスダンパー。

2021年レクサスNX Fスポーツの後端に装着されたパフォーマンスダンパー。

パフォーマンスダンパーは、もともとはヤマハ発動機(以下、ヤマハ)が開発したもので、その誕生について簡単に説明しよう。ヤマハが「車体剛性が走行に及ぼす影響」をテストしている際に、市販の後付けタワーバーなどを取り付けて走行試験を重ねていた。この場合、車体剛性が高まって一見シャープなハンドリングを得たように感じる半面、シャープさによる収束性のアンバランスが生まれたり、乗り心地が硬くなるのを問題視したという。

そこで、タワーバーの代わりに粘弾性ゴムを2枚の金属プレートで挟み込んだものを採用し、走行中の極微小な車体の変形に対して微妙な減衰力を与えた。結果は、車体を振り回して走っても収束性が良く、しっとりかつ正確に走ることができたという。

画像: 2015年にはレクサスGSにパフォーマンスダンパーを採用している。

2015年にはレクサスGSにパフォーマンスダンパーを採用している。

その後に試行錯誤を重ねることで、基本的な構造をサスペンションのショックアブソーバー(ダンパー)と同じくするパフォーマンスダンパーが誕生したわけだ。ヤマハではパフォーマンスダンパーによって体感できる効果として以下の3点を挙げている。

・操縦安定性の向上
・乗り心地の向上
・車両の上質感の向上

パフォーマンスダンパーは、車両進行方向に対して、直交方向に取り付ける。これはボディがねじられる方向に固定して付けるのならば、装着場所を指定していないが、効果に差は生じる。ヤマハによるテストではクルマの前端と後端の両方にセットで取り付けると、ボディ全体にその効果を行き渡されることができ、効果が最大限に発揮できるという。

スバルでも2005年発売のインプレッサS204にパフォーマンスダンパーを採用しスポーツ性を上げた。

パフォーマンスダンパーをはじめて装着されたのは2001年、限定300台で発売されたトヨタ クラウンアスリートVXだった。2004年には日・欧・北米向けトヨタ カローラのスポーツグレード車に量産車として世界初採用された。

近年で装着された例は2021年に発売されたレクサス NXで、基本どおり車両の前後にパフォーマンスダンパーを装着している。これによって走行中に生じるボディのしなりや微振動を吸収し、ハンドリングの特性を一層シャープにするとともに、乗り心地と静粛性の向上を図った。減衰力切り替え応答に優れたリニアソレノイド式AVSを設定している。これによりおおきなうねりと細かな凹凸が複合した路面でも、フラットな姿勢の維持とショックの遮断を両立し、優れた操舵応答性、安定感、快適な乗り心地の実現を狙っているのだ。(文:FAN BOOK編集部 飯嶋洋治)

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