「BMWパワーの新展開」最後のキーワードは「X:4輪駆動」。この「X」がもたらすBMWの走りの世界はいつのまにか大きな広がりを見せている。とくに、X3とX4のグレード数とエンジンのラインナップを見直すとその充実ぶりには驚かされる。単に人気だから選択肢を増やしたのか。いや、乗り比べるとそのほかの理由も見えてくる(Motor Magazine 2022年4月号より)

失われていた直6特有の鼓動が復活したX4 M

このX3 xDrive20dの平和な世界と対極にあるのがX4 Mコンペティションである。最新のM4コンペティションと同じストレート6エンジンを搭載するX4 Mコンペティションは、どんな回転域からでもすさまじいばかりのパワーを発揮。

もはやパワーバンドという概念が不要なくらい、縦横無尽なハイパフォーマンスぶりを示す。しかもスロットルレスポンスが恐ろしいほど鋭く、ペダルを踏み込んだ次の瞬間にはパワーの奔流に呑み込まれてしまうほど、エンジン出力は鋭敏に立ち上がる。

画像: X4 Mコンペティション。X4、X3の最高峰モデルが「M コンペティション」。本格的なサーキット走行にも対応する性能とプログラムを備えている。

X4 Mコンペティション。X4、X3の最高峰モデルが「M コンペティション」。本格的なサーキット走行にも対応する性能とプログラムを備えている。

ただし、そういった性能面以上に強調したくなるのが、なんとも心地いいストレート6のフィーリングである。BMWの直列6気筒エンジンがシルキースムーズと称されるほどの滑らかさを備えていることは周知のとおり。ただし、F30の3シリーズなどに積まれたターボ仕様あたりからストレート6特有のビート感が失われ、単なるデッドスムーズに変わり果ててしまったように思っていた。

しかし、最新のM3やM4ではスムーズななかにも直列6気筒ならではの規則正しい鼓動が感じられるようになり、その奥深い官能の世界にどっぷりと浸れるようになった。これこそ、ほかのエンジン形式では味わえない、ストレート6の世界といえる。

X4Mもこれと同じで、単純な滑らかさとはひと味もふた味も異なる魅惑的なバイブレーションを楽しめる。最近は他ブランドからもストレート6の個性を前面に打ち出したエンジンが登場しているので、「直6の本家」としてはこうした状況が看過できなかったのではないだろうか。

足まわりも、どこかM4コンペティションに通ずるロードホールディング重視のセッティングに変わっていた。ただし、重心高の高いSUVボディを支える都合か、路面からのショックをヤンワリとかわすのは苦手で、快適性の面ではM4コンペティションに大きく後れをとっている。つまり、X4Mの足まわりはあくまでもスポーツドライビング好きのための設定で、誰にでも安心してお勧めできる乗り心地ではなかったのだ。

3Lディーゼルは優秀だが乗り心地には不満が残る

X3 M40dはディーゼルエンジンながら、やはりストレート6の魅力に溢れたモデル。BMW製ディーゼルユニットの吹き上がりが鋭いことはX3 20dの項でも述べたが、X3 M40dは別格で、回転数の上昇の仕方は一部のガソリンエンジンより鋭いと思えるほど。そのうえでストレート6らしいビートが感じられ、ときにはガソリンエンジン顔負けの魅力的なサウンドを奏でてくれる。これまでにあまり例がない、極めて官能的で、しかも万能なパワーユニットといえる。

画像: X3 M40d。ミラーの形状やフロントグリルに配置された「M」バッジがMスポーツとは異なる点だ。

X3 M40d。ミラーの形状やフロントグリルに配置された「M」バッジがMスポーツとは異なる点だ。

これに組み合わされるシャシはMパフォーマンスモデルゆえに硬め。いや、5シリーズや4シリーズのMパフォーマンスモデルのように「強靱ななかにもしなやかさが感じられる」タイプではなく、ゴツゴツというショックがやや不快に感じられるほどだった。エンジンが極めて上質な回り方をするだけに、この点は残念。いっそのことM760Liのように「ゴージャスなスポーツモデル」に仕上げたほうが、このエンジンの魅力を生かせたように思える。

最後にハンドルを握ったX4 xDrive30iはガソリンエンジンゆえに2台のディーゼルモデルよりさらに滑らかで静か。このパワーユニットが本領を発揮し始めるのは3000rpmを越えてからで、そこから6500rpmまで一気に吹け上がる。

その意味でスポーティな味わいを秘めたパワーユニットといえる。いっぽうで4気筒らしいバイブレーションや音は敢えて打ち消されていたが、いっそのことそれらを前面に打ち出したほうがBMWファンから喜ばれたのではなかろうか。

Mスポーツの足まわりは、ストロークの浅い領域に妙な硬さが残っており、そこからさらにストロークしたときに伝わるしなやかさとの間に軽いアンバランスが感じられた。個人的には、当たりが柔らかいレギュラーモデルのほうが好みだ。

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