アカデミックな職業の人々に人気のスバル ブランド
ヨーロッパ、とくにドイツからアメリカにやってきたモータージャーナリストの同僚たちがまず驚くのは、日本製自動車の数である。とりわけスバルが目に付くようだ。その理由は明らかで、たとえばドイツの2021年における販売台数を見るとスバルは12カ月で4671台(!)で、ランキングは29位、市場占拠率は0.2%にしか過ぎない。
一方アメリカ市場では昨年、半導体不足の影響もあり前年比マイナス4.6%だったが、それでも総販売台数は58万台余りで、同52.9万台のフォルクスワーゲンブランドを大きく引き離している。2021年のアメリカでの新車総販売台数はおよそ1490万台であるからスバルの占拠率は3.9%、歴代でのシェアは4%を超えており、ドイツの120倍以上販売されているのだから多く見かけるはずである。
スバルのアメリカ市場での目に見えての躍進、正確には市場占拠率の拡大は2008年のリーマンショックから始まっている。さらにコロナ禍であってもシェアを伸ばし、2020年6月には4.68%と過去最高の数字に達している。
こうした理由をスバルでは「比較的高く安定した収入を持っている顧客に支えられている」と説明している。これをもう少し具体的に言えば、景気に左右されない職業、すなわち一般企業ではなくて、アカデミックな職業に就いている人たちに多く選択されてきたのである。以前は「ベージュのボルボに乗っている」と形容されてきた人たちのことである。これは、地味だが安定した生活を送っている人々のことを言う。
「家族愛」というテーマにフィットするアウトバック
こうしたライフスタイルを持っている彼らが徐々にスバルに移って来た理由はさまざまであるが、そこにあったのは以下に挙げる理由の複合的な結果であると思う。
この成功要因を経済紙などが様々な分析解説を行ってきた。長きにわたって生産が続けられ安定した性能と耐久性、信頼性を確立した水平対向4気筒エンジン、定評あるフルタイム4WDの優秀さ、WRCでの活躍、アメリカに最適なボディサイズ、犬を使ったコマーシャルと関係団体への寄付、リーンな在庫、地域活性化に大きな役割を果たしたインディアナ工場の存在、コンシューマーレポートの高評価などなど、枚挙にいとまがない。
こうしたさまざまな要因が徐々に効果を上げて、「スバル=犬=守る=愛=家族=安全=安心」というエモーショナルな構図ができあがったのだろうと確信する。
こうしたイメージが確立した証拠、状況はアメリカの映画に登場するスバルをみれば容易に想像が付く。いくつかの例を挙げれば2014年の「ネブラスカ」、新しいものでは今年公開される「ゴーストバスターズ/アフターライフ」である。
前者は本当は詐欺なのに賞金が当たったと信じ込んでそれを隣の州まで受け取りに行くと言って聞かない頑固な父と仕方がなしについて行く息子の二人の心を繋ぐストーリー、後者は大ヒットで話題になっているようにお爺ちゃんの遺志を継いで幽霊退治を敢行する孫のアクション映画である。両者はともに「家族愛」というテーマが共通で、脇役としてスバルのアメリカでのアイコンであるアウトバックが登場する。